【マーケティング】戦略BASiCSとは? 具体例と背景の理論から理解する

企業経営理論

マーケティングの用語は多数あり、使いこなすのは難しいですよね。

その中でも、分かりやすく一貫性のある提案につなげられるのが戦略BASiCSの考え方です。

とはいえ、この戦略BASiCSという考え方は勉強していたらどこかで聞いたことがある話だと感じると思います。

理解を深めるためマーケティング関連の用語を改めて振り返り、背景となる用語をまとめなおしてみました。

この記事を読むと点と点が線でつながるように、戦略BASiCSマーケティングの一連の流れをつかむことが出来るようになります。

戦略BASiCSとは?

中小企業診断士の佐藤義典さんが提唱するマーケティング戦略のフレームワークです。

Batttlefield(戦場・競合)・・・勝てる戦場で戦うべし
Asset(独自資源)・・・自社独自の経営資源を蓄積すべし
Strength(強み・差別化)・・・自社を選ぶ理由を提供できれば儲かる
i
Customer(顧客)・・・顧客ニーズに応えれば儲かる。顧客を知る。
Selling message(メッセージ)どう伝えれば刺さるか。伝わらないと意味がない

自社の戦う場所を考え、

活用すべき強みを考えて、

顧客を深堀りし

どのように伝えるかを考える。

ということの一連のフレームワークです。

 

マーケティングだけでなくプロダクト開発や個人のキャリア形成などの考え方にも応用できます。

小説の形にして分かりやすく表現している下記の本が超おススメです。

ビジネス本なのに何とも言えない感動で泣けます(笑)

 

実は、下記のような書評を見て今回のような解説記事を書こうと思いつきました。

よくマーケティングの教科書に載ってくる4Pやらブランドやら、様々なマーケティング用語と戦略BASiCSとがどのように繋がるのか、その辺りをもう少しきちんとわかったら自分の知識が有機的に繋がって、全体像を把握できたのになぁ。。と感じました。

というわけで、戦略BASiCSとマーケティング用語のつながりを解説していきます。

 

 

Battle Field 戦場・競合

まず、「どこで戦うか、戦場を決める」

BASiCSはその文字の順番に考えます。

最初はBの戦場、どこの市場で戦うかを考えます。

 

戦場が決まると、、「誰と闘うか」も決まります。

 

注意点は具体化しすぎると戦場が狭すぎて発想が乏しくなり、

抽象度が高すぎると 戦う相手が不明瞭になり何を武器に戦えばよいかも曖昧にになることです。

具体と抽象に関しては過去の記事に詳しく書いています。

【書評】『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』を読んだら勉強と仕事に役立った。

 

例えば、高級化粧品市場という戦場もあれば、●●駅の高級デパート化粧品売場という戦場もあります。どこまで具体的な市場に落とし込むべきかですが、

もっと簡単に競合の定義をすると、
自社商品が無くなった時の他の選択肢」です。
例えばマクドナルドを考えたときに、一見するとモスバーガーやロッテリアが思い浮かぶかもしれませんが、近くに丸亀製麺があったらどうでしょうか。近くにある大戸屋は、ドトールは影響を受けるでしょうか。自社商品が無くなった時の他の選択肢を考えると戦場・競合が見えてきます。

お客様のアタマの中で「食事とコーヒーが飲める場所」「すぐに食事が出てきて次の予定に間に合う場所」など競合は同じ価値を満たす選択肢の集合戦場はその「価値」で表現されます。

 

戦場の考え方は、マーケティングの知識では、

ポーターの5フォース(5つの競争要因)と STP分析

から考えると分かりやすいと思われます。

 

ポーターの5つの競争要因  その市場はどんな競争があるの?

●既存企業同士の競争・・・その市場にどれだけ既存プレイヤーが存在するか

●新規参入の脅威  ・・・どれだけ新しいプレイヤーが参加しやすいか

●代替品の脅威   ・・・その商品の代わりになるものがあるか

●売り手の交渉力  ・・・仕入れ先との力関係

●買い手の交渉力  ・・・販売先との力関係

の5つの要因から競争市場を分析します。

どこで戦うか(BattleField)を考えるときに、その戦場がどれだけ勝算があるかを考えないといけませんよね。

 

例えば、商品の仕入れ先が1社しかない場合は「売り手」の交渉力が高くて仕入れ値が高くなり、競争力が弱くなる、というように5つの要素からその市場を考えて自社にとって有利かどうかを検討します。

もし販売先(買い手)が1社しかなければ、厳しい条件を飲むしかない時もありますよね。

この案件を落としたら、、という恐怖も交渉力の一部です。。(泣)

 

STP分析  ・・・どの市場をターゲットにする?

S セグメント

市場を細分化して標的とする市場のニーズ、つまり「戦うべき市場」を探します。

消費者ニーズが多様化したため、「30代女性」というような人口統計的変数だけでは消費者行動を正確に把握できなくなっており、

現代のマーケティングでは地理的変数(ジオグラフィック変数や)サイコグラフィック変数などを組み合わせることが重要です。 ●●に住む~、●●を好む~などを組み合わせてターゲットの具体的イメージを高めます。

T ターゲティング

限定された市場を選択する。

●無差別型マーケティング  単一のマーケティングミックスによって市場全体を狙う戦略

●差別型マーケテイング   一つ一つの市場セグメントに対応したマーケティング活動を展開

●集中型マーケティング   ニッチャー企業の基本戦略。一つの市場を集中的に展開

P ポジショニング

自社の製品が消費者の心の中でどのような位置づけかを明確にする。
憧れ、親しみやすい、日常使い、スポーティーなど。

未開拓市場を切り開く「ブルーオーシャン戦略」もポジショニングに重きを置いた戦略の一つです。

競合が激しいレッドオーシャンを避け、バリューイノベーションを行うことで未開拓市場を創造すべきというブルーオーシャン戦略もいわばBattleFieldの観点の戦略ですね。

 

Asset 私らしさ、独自資源

自分・自社の経験の棚卸をし、過去の経験に共通する行動パターンから、自分・自社らしさを知る。

言わば、自分・自社のDNAのようなもの。

 

競合が決まらないと独自性があるかどうか決められないので、BattleFieldの次の順番になっています。

 

独自資源は強み・差別化の源泉となるもので、

経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)のうち、他社よりも優れていて差別化できる強みを抽出します。

開発力が強みと考えている会社も、他社にも同じようなことが出来るようでは強みになりません。

 

「白いネコは何をくれた」のストーリーでは過去を振り返って自分の価値観や好きなことを見出していましたが、マーケティングの用語で考えると強みの源泉になる「VRIO分析」をすることが答えに近いと思います。

VRIO分析  強みの源泉は何か

Value(経済的価値)

企業の持つ経営資源が経済的価値があるか。外部環境である機会に対してどれだけ付加価値を生めそうか、脅威に対してどれだけ対応できうるか。

Rarity(希少性)

その経営資源をどのくらい多くの競争企業が保持しているか。

Imitability(模倣困難性)

その経営資源を獲得できるか、あるいは開発するのに多大なコストが必要になるか。

Organization(組織)

その経営資源を組織全体で使いこなせる仕組みがあるか。

コア・コンピタンス

経済性があり、希少性があり、模倣困難性がある経営資源で技術的競争優位の源泉になりうるもの。

他社にはマネできない、自社固有の価値を提供する、その企業独自の中核的な技術の束。

 

特に特許など法的にマネできないもの、

希少性の高い資源、伝統や歴史など一朝一夕でマネできないもの、

などは独自資源になりやすいですね。

 

 

Strength 強み、差別化

Assetで強みの源泉を確認し、次の手順としては具体的にどの強みをどの軸を使って活用するかを考えます。

強みの使い方は有名なフレームワークであるSWOT分析が最適です。

SWOT分析

プラス面マイナス面
内部環境S 強みW 弱み
外部環境O  機会T 脅威

特に大事なのは単に個別4つの項目を考えるのではなく、組み合わせで考えることです。

・機会×強み ・・・外部環境の「好機」にどう「強み」が使えるか、
「強み」を用いてどう「機会」を掴むか

強みを複数、保有していたとしても外部環境を的確にとらえていないと活用することが出来ないことがあります。

例えば、大人気アニメの建物とよく似た構造を持つ旅館が

アニメのヒットを「機会」として、

今まではウリにしていなかった構造を「強み」として誘客に使える場合もありますね。

わざわざ建てるのは費用面で困難なので模倣困難性が高く、

差別化の要素になります。

 

差別化の軸

差別化の軸には3つの軸があります。

手軽軸・・・早い、安い、便利 (ファーストフード店)

大量生産や効率化が図れるため大企業のほうが有利。早い、安い、うまい牛丼屋など。

商品軸・・・品質が良い (高級ブランド、高価格帯の店)

商品開発力やブランド力がある会社が有利。

とはいえ、中小企業の技術力や伝統の~~なども立派な差別化の要素になります。

密着軸・・・顧客に応じたサービス(地域密着型、顧客ごとにカスタマイズ)

中小企業でも戦略次第で優位に立てる軸。顧客ごとの対応のワントゥワンマーケティングも密着軸です。

大企業でもエリアに集中して資本を投下する密着方法もあります。

 

差別型マーケティング・集中型マーケティング

差別型マーケティング

企業がひとつひとつの市場セグメントに対応したマーケティング活動を行うもの。

自社の経営資源を有効活用できる、類似性を持つ複数の市場セグメントで

事業を展開するべきである。

選択的専門化・・・適切な市場を複数選択する

製品専門化・・・製品を特化して、複数の市場に展開する

市場専門化・・・特定のニーズに対応する

「S 強み」の背景理論で紹介していますがこれは「B 戦場」の要素も大きいですね。

製品専門化や特定のニーズに対応するということで、次項の「C 顧客」の要素も関係するマーケティング知識です。

この戦略BASiCSの理論自体もそうですが、各項目は切り分けられず、連動しているものが多いです。

集中型マーケティング

企業が一つの市場セグメントを狙い、最適なマーケティングミックス(4Pのこと)を構築し、マーケティング活動を展開する、ニッチャー企業の基本戦略です。

 

「弱み」も裏返せば「強み」になることもありますね。

例えばコンサル会社で社長1人しかいないのは一見すると弱みですが、

・社長が全ての業務を把握

・担当者によるサービスのレベル差が無い

・意思決定が迅速

などなど

 

 

Customer  顧客

強みが決まれば、その強みを理解してくれる顧客は誰かを考えましょう。

強みを理解してくれるということは、ターゲットが求める価値が自社が持つ強みと一致すること。

 

それには、

顧客自身でも言語化や認識できていないニーズである『潜在ニーズ』をつかむこと

すなわちどれだけ深く顧客の理解が出来るかが、

刺さるサービスのポイントになります。

 

売れる・売れないは最終的には顧客が決めることなので、

顧客が求める価値や自社の戦略である差別化軸でセグメントすること、

つまり顧客を絞る(=戦略的な決断となる)ことが大事になります。

 

会社でなく個人で考える場合は、

自分は誰とと共にいたいのか、

自分の強みに合う人、共鳴してくれる人を選ぶということが重要です。

例えば、「婚活市場」で自分は家事が強みだと考えていても

相手が家事をしてくれることより、一緒に仕事や旅行をすることに重きを置いている人たちだったら刺さらないですよね。

 

マーケティングの4C

顧客分析のマーケティングの知識のもう一つは、

マーケティングの4C、有名な「マーケティングの4P」を顧客視点から見た考え方です。

Customer Value (顧客にとっての価値) ⇔ Product

Customer Cost (顧客の負担) ⇔ Price

Convinience (顧客の利便性) ⇔ Place

Communication (コミュニケーション) ⇔ Promotion

 

下記の記事でも紹介しています。

【マーケティング】マーケティング・ミックスの4Cって何?4Pとの違いは?
伝統的マーケティングの4Pと4C,マーケティング4.0のデジタルマーケティングにおける4Cの内容を『えんとつ町のプペル』など話題の事例を参考に解説しました。

市場細分化(マーケット・セグメンテーション)

最初のBattleFieldにも記載したSTP分析のSの部分です。

繰り返しになりますが、個顧客を考える際に地域や年代や性別だけで分けるのではなく、

どのようなニーズを持っているかという感情面も想像することが大事です。

「アウトドア好き」、「健康によい」などのサイコグラフィック分析や、

使用率やロイヤルティなど行動変数を考え、顧客が「どんな人」かを考えます。

Selling Msessage メッセージ

BASiCSの最後のSはセリングメッセージです。

 

「伝わっていないことは存在しないことと同じ。」

 

顧客に見えるものは、顧客に見えるものだけ。伝わってこそ価値が出ます。

 

そのため、どう伝えれば刺さるか、伝達手段・媒体・売り文句

BASCの4要素を分かりやすくまとめて言い表すように考えます。

 

個人で考えると、自分は誰だと世界に宣言するのか いわば「生きざま」になります。

ツイッターでもアカウント名を職業や強みの表現、生きざまにしている人は多いですよね

例えば、「●●●●@WEBマーケター×企業コンサル×SNS集客」みたいなやつです。

 

セリングという観点でのマーケティング用語は下記になります。

セリングとマーケティング

セリング 目先の販売に重点を置き、「売り込む方法」に重点を置いた活動

マーケティング 将来の売上のための「売れる仕組み作り」に重点を置いた活動

 

”マーケティングの理想は販売(セリング)を不要にすること”

ドラッカー

という言葉が有名ですね。

マーケティングとセリングを使い分けて覚えておきましょう。

 

マーケティングの4P

どう伝えれば刺さるか、伝達手段・媒体・売り文句

4Pの切り口で考えると分かりやすいです。

 

Product 製品の機能、品質、ブランド、保証

Price 価格、値上げ、値下げ

Place 流通、販路、輸送頻度、倉庫の数、立地

Promotion 販売促進、広告、パブリシティ、人的販売

マーケティングミックスとはこの4Pの組み合わせになります。

USP

USP(Unique Selling Proposition)

propositionとは提案という意味ですので、商品・サービスが持つ独自の強みの提案という意味合いになり、顧客に選んでいただくための自社の優位性の定義づけを行うマーケティング概念です。

 

下記のサイトがUSPの事例もあり面白かったです。

「あなたが死んだら、彼らはそれを奪い合う」

商品の丈夫さと価値の高さを表現した面白いキャッチフレーズですね。

USP(Unique Selling Proposition)を徹底解説! 【参考になる9つの事例付き】
「5分で読めます」競争は、ビジネスにおいて避けることはできません。特にECサイトにおいては、日本中そして世界中に競合がいるので、競争をしなければならなくなっています。 消費者は選択肢の多さに圧倒されているので、あなたのブランドが他とどう違うのかをすぐにわかりたいと思っています。あなたとあなたの商品を正しく位置付ける方法...

 

 

 

たとえば、旅行会社で婚活市場の戦略BASiCSを考えてみた

総合旅行業務管理者の資格をかなり昔ですが取得したので

旅行と婚活で考えてみました。

 

 

B 戦場は :婚活パーティーは既存の競合多数なので旅行をメインとした婚活市場

A 独自資源は :旅行会社としての顧客、旅行ノウハウ、自治体とのつながり

S 強みは :婚活をメインでなく「旅行をメインにした自然な出会い」という婚活市場での差別化

i

C 顧客は :婚活サイト登録に抵抗感がある人、旅行したいが一緒に行く人を探すのが面倒な人

S セリングメッセージは  :「一人参加OK、気の合う仲間探し旅」

 

戦略BASiCSのiはIntegrate(=統合)のiになります。

今回の例でいえば、「自然な出会いを演出」ということにBASCSに一貫性を持たせています。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

マーケティングを勉強されてきた方にとっては、

どれも聞いたことのある用語ばかりだったかもしれません。

しかしフレームワークや知識を使う順番や使い方を戦略BASiCSの流れで理解しながら使うとかなり実践でも使いやすくなると思います。

もし勉強するのならば中小企業診断士の企業経営理論を学ぶのがいいと思います。

時間が無い方で通勤時間が多い方にお勧めなのはSTUDYing(昔は通勤講座という名前でした)

 

学生だったら、下記のようなスクールもあるみたいです。うらやましい。



読んでいただきありがとうございました。

 

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