【書評】『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』を読んだら勉強と仕事に役立った。

中小企業診断士二次試験

こんにちは、けんです。

 

今回は、中小企業診断士2次試験や日常のビジネスで役にたつ本の紹介です。

 

「具体と抽象 世界が変わって見える知性の仕組み」著者:細谷功

簡単に読め「世界が変わって見える」きっかけになるため、読んでよかった本の1つです。

実際に、考え方の幅が広がった気がします。

 

◆この本の目的

抽象化を扱う方法を「具体」との対比で分かりやすく解説する。

具体と抽象の往復を実践する

・周囲の「具体レベル」にのみ生きている人とのコミュニケーションギャップをなくす。

 

◆読むべき人

 発想力や理解力を向上させたい人

 ②具体レベルのみに生きている人とのコミュニケーションギャップに悩んでいる人 

  (→理論を勉強すると陥りがち?)

 

◆結論

 抽象と具体は”どちらも大切”

  ●具体のほうがわかりやすいとは言えない。

   何が具体で何が抽象化は相対的である


抽象的なものは解釈の自由度が高い

   ・抽象的なものは応用が利く

   

そして、革新的なアイデアは抽象化から生まれる

 

それでは解説していきます。

「具体=わかりやすい」「抽象=わかりにくい」ではない

「あの人の話は具体的でわかりやすい」という会話は良くありますが、

具体は解釈の自由度が低く抽象は解釈の自由度が高い

という特徴があります。

 

抽象的すぎる=悪 みたいに語られてしまうこともありますが、

人間の考える行為は何らかの形で「具体と抽象の往復」をしており、

この具体と抽象の往復を意識するだけで世界が変わって見える、と筆者は主張しています。

 

具体と抽象の特徴は下記になります。

具体 抽象
・1つ1つ個別対応 (りんご、みかん、桃) ・分類してまとめて対応  (果物)

※果物もまた、食べ物の中の具体。

・解釈の自由度が低い (応用が利かない) ・解釈の自由度が高い →(応用が利く)
・「実務家」の世界(具体レベルで理論を実行) ・「学者」の世界 →(理論・法則化)

 

ビジネスで必要となる「論理的思考力」や「発想力」とは

   「抽象から具体へ、具体から抽象へ転換する能力」になります。

 

では、抽象化することに関し、少し詳しく考えてみましょう。

抽象化とは

抽象化とは、「特徴が同じものをまとめる」。「共通点を見つける」こと。

例えば、マグロも鮭もカツオも、まとめて「魚」です。

 

マグロもまた、カジキマグロ、クロマグロなど

多くのマグロ、大きいマグロ、中トロなどの抽象ですね。

 

そして生物というカテゴリーの中では魚は具体です。

「相対的にどう見るか」で具体か抽象かが決まるということです。

 

抽象化を一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて、幹を見ること」です。

 

企業経営では「伝統の製法」「リピーターの多さ」という言葉を抽象化して「強み」としますね。

「強み」の解釈の自由度は高いので「応用が利き」、「理論化、法則化」しやすくなります。

 

法則化をすると、強みの活かし方という観点で具体的な手法を考えることもできます(具体と抽象の往復)。

どのように抽象化をするか 関係性と構造を把握すること

どのように抽象化をするか、という観点で考えると

具体レベルでは基本的に個別バラバラの世界を、関係性や構造を抽象化することで理解を深めることができます。

 

例:数学の方程式

F=ma (ニュートンの運動方程式、らしい)

力(F)が質量(m)と加速度(a)の積になるという関係性を表しますが、

数式はまさに抽象化の一つですよね。

 

人類は物事を抽象化することによって様々な計算が出来るようになったと考えられます。

単純な掛け算なども抽象化の概念が無かったら、と考えるとゾッとしますね。

 

例:歴史の勉強

一つ一つの出来事の年代を暗記しているだけでは関係性が見えてきませんが、

抽象化することで見えてくることもあり、因果関係から 将来を予測することが可能です。

 室町幕府:大名の力が強く、幕府の権力が弱まった

 江戸幕府:参勤交代などで外様大名の財力の削減を狙った。

 

抽象化能力が高いと、因果関係を捉えやすくなり、マクロ環境を予測することなどで仕事に活かせることが多くなるそうです。

では、抽象化がうまい人はどのような人でしょうか。

たとえ話がうまい人 =「具体→抽象→具体」がうまい人

「たとえ話」は説明しようとしている「対象」を具体的につかんでもらうために、

・抽象レベルで同じ構造をもつ、

・相手の身近な世界のものに、

翻訳」する作業と言えます。

 

うまいたとえ話の条件
  • 誰にでもわかりやすい、身近で具体的なテーマで例える
  • 説明しようとしている対象との共通点が抽象化され「過不足なく」表現されている

つまり、「共通点と相違点」を適切につかんでいることが抽象化・たとえ話の出来を左右するようです。

2019年のM-1チャンピオン、ミルクボーイのコーンフレークのネタは、具体と抽象と具体の往復の例かもしれませんね。

 

「生産者の顔が見えないらしい」(抽象的、多様な捉え方が出来る)

「コーンフレークやないか」(具体的なもの、身近なもので例える。決めつけるw)

「浮かんでくるのは腕組んでるトラの顔だけ」(浮かんでくる顔という抽象的共通点、トラという相違点)

 

たとえ話のうまい人とは 具体・抽象・具体の往復運動による翻訳にたけている人のことであり、

共通点と相違点を適切につかんでいることが、たとえ話の出来ばえを決めます、と前述しましたが

芸人さんは抽象化スキルが高そうですね。

 

議論が噛み合わない理由(コミュニケーションギャップ)

少なからず、勉強や読書をする人は「抽象的概念を扱うこと」が得意になるケースが多いです。

そして、具体レベルでしか物事を考えない人との「考え方のギャップ」が出てきます。

 

私も、入社当時は組織のトップの営業方針に対して、

「もっと、具体的に話さないと分からないよ!!」などと思っていました。

実際は、上司の方針・抽象概念をかみ砕いて、具体レベルでどう活用するかを個々で考えればよかったのです。今更ながらこの本を読んでいて思い出しました。

 

当時は「具体的な手法」を上司が伝えるべきだ、と考えていましたが、

状況に合わせて抽象的な指示の範囲内で、具体的な手法は自ら考えるべきだったと思います。

 

ビジネスにおける具体と抽象の活用

仕事の階層には下流の仕事と上流の仕事があることを意識するのが大事で、

これらの仕事の違いを意識しておかないと

ドラクエでいうと魔法使いに「力の種」を使うような、

間違った自己研鑽をすることになります。

具体
下流の仕事が多い
抽象
上流の仕事が多い
・指示内容を忠実に遂行する能力がある。
集団の力を活用しやすい
例:「こんな感じでやっておいて」という依頼をいいかげんな「丸投げ」だととらえる
創造性がある。 個人の能力が重要

例:「こんな感じでやっておいて」という依頼を自由度の高い依頼ととらえる

 

・商品の改善点を探す(具体的な意見を聞く)のが得意  例:ツマミを小さくしてほしい 革新的な商品を作るのが得意
(抽象的なニーズを聞く)例:もっと使いやすくしてほしい
細かく報告が得意 要約が得意
・映像的 (具体化して表現) ・小説的 (解釈の自由度が高い)
・パクリ (同じ内容を模倣) ・コンセプトを真似る (抽象化してまねる)
・量を重視 ・どこまで単純化できるか

そして、具体のみに生きる人」と考え方が異なる点を理解しておきましょう。

具体でしか考えられない人は、「こんな感じでやっておいて」という依頼に対しては嫌悪感を示し、

例えばの例を示すと、まさに文字通りそのまま対応したりします。

 

 

私にとってはこの本を読んで、一番ハッとした部分です。

「こんな感じ」の中で自分の能力や外部環境を踏まえて裁量の範囲で自由に対応することが楽しいと感じる人もいれば、

「こんな感じ」ではなく、具体的な成果物の指示がないと嫌だという人もいる。

 

「このデータ、エクセルでまとめておいて」と言って

項目名を一つ一つ伝えないといけない人もいれば、

趣旨を読み取って必要な項目を追加する人もいますよね。

 

逆に抽象化が得意な人に、項目を一つ一つ指示をしていたら、

「そんな暇があったら自分で作ったほうが早いんじゃないですか」、

と言われそうです。(というより私なら言います)

「方向性だけ言ってくれればそれに適した資料を作りますよ」、となりそうですよね。

 

 

次に、パクリとコンセプトに関して、私の考えですが例を挙げます。

パクリ・コンセプト例 タマゴッチの例

例えば、タマゴッチが昔ブームになった時に「偽たまごっち」も出回りましたが、

偽タマゴッチは具体化しすぎてパクリ、意匠権侵害で2000万円。

デジモンはポケモンとタマゴッチのコンセプト(育成+戦闘)を真似たのでOK、

というのが分かりやすそうですね。(パクリと言われていたかもしれませんが)

パクリ・コンセプト例2 従業員満足度 重視の例

他社の成功例である、『従業員に昼食代全額会社負担(具体)』という施策をマネして、

「従業員の満足度の最大化」

というコンセプトを打ち出すのは全くパクリでは無いですよね。

 

具体化のみに生きる人は

昼食代全額会社負担をマネるかどうかという観点で見て、

抽象化を考える人は

昼食代全額負担=従業員満足度を向上させること、と抽象化し、

「ES向上が会社業績の向上させる」ことをマネるには、という観点で見ることの例になります。

 

◆具体と抽象が分かったうえで、どうするか 

 下流の仕事は具体上から言われたことを適切に遂行。

 

 上流の仕事は抽象、創造性が必要で個人で戦わなければいけない仕事


自分が「具体の仕事」をしているのか、「抽象の仕事」をしているのか把握していないと、

 勉強をするにしても間違った勉強をすることになるので注意が必要です。

 

 抽象に向いている人と具体向きな人がいるので、

 不得意な分野に手を伸ばし時間を浪費しないことが大事。

 

 

 商品開発であれば多数の具体的な意見を参考にしていては革新的な商品は生まれず、

 無難な商品になってしまう。

 

 ジョブスが人の意見を聞かず、革新的なアイディアを形にしたように、少数の個人の抽象化能力が重要となります。

 

 自分の得意分野を把握する。自己分析が大事、ということですが、

◆自分が具体向き、抽象向き、どうやって判断するか

簡単に判断する方法は要約が得意かどうかです。

今日起きたことを要約できますか?


抽象が得意な人は 枝葉が抜け落ちることもあるが全体を要約できる。


具体が得意な人は 要約は出来なくても1件1件を細かく説明できる

 

自分自身の得意分野を把握しておくことで、自分の話し方が抽象が多いか具体が多いかを

考えるきっかけになりそうですね。

最後に 抽象化だけでは生きにくい

この本の結論は「抽象化」と「具体化」をセットで考えることが重要と説いています。

抽象化を意識すると、

・本来関係がない2つの事象にまで関係性を見出してしまう

という「抽象化バイアス」がかかります。

 

結局重要なのは「抽象化」と「具体化」をセットで考えることで、

 

①まずは徹底的に現実を観察し

②実践を通して世の中の具体をつかみ

③それを頭の中で抽象化して思考の世界に持ち込む

④そこで過去の知識や経験をつなぎ合わせてさらに新しい知を生み出したのちに、

⑤それを再び実行可能なレベルにまで具体化する。

具体抽象具体、の流れですね。

これが人間の知とその実践の根本的なメカニズムという事になるそうです。

 

余談ですが、抽象化の最たるものとして数式が挙げられていましたが、

私としては下の抽象化された式が好きです。

1.01の365乗=37.8

0.99の365乗=0.03

 

コツコツと、今日も頑張りましょう!

 

読んでいただきありがとうございました!

コメント

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