【書評】『自分のアタマで考えようー知識にだまされない思考の技術ー』理論やフレームワークを学ぶ理由

企業経営理論

今回は中小企業診断士試験の勉強に役立つ本を探していて見つけた本の紹介で、

有名社会派ブロガーである ちきりん さんの著書

自分のアタマで考えよう』を紹介します。

 

著者は外資系コンサル出身の方で、コンサルの思考方法を学ぶのに非常に参考になること間違いなし。

 

正直なところ、私は「頭を使って考えろ」と軽率に発言するタイプの上司があまり好きではありませんでした。

自分のほうが考えて行動していると生意気にも自負していたためです。恥ずかしいですね。笑

 

しかし、この本を読んでみると、自分ではそれなりに考えているつもりでも、もっと深く考えられる方法などがいくつも見つかりました。

この本で学べる思考の方法は中小企業診断士2次試験の勉強にも役立つと思います。

 

1.知識と思考の違い

プロ野球の未来について考えてみよう

まず最初に、例題として『プロ野球ファンの年齢構成が意味するプロ野球の未来』を考えてみましょう。

野球に関して知識のあるAさんと野球の歴史など知らない留学生のBさんがそれぞれ年齢構成のグラフを見てからプレゼンするという設定です。

 

Aさんのプレゼン

プロ野球の未来は暗い

現在のファンが高齢者が中心。

有名選手がMLBに流出。

若いファンを増やすための努力をすべき

 

もっともらしいプレゼンだと思いますが、Aさんは果たして自分の「頭で考えた」内容でしょうか。

 

もとから巨人戦の視聴率の低下や部活動の人数減少など「知っていた」ことではないでしょうか。

 

知っていることは「知識」であり、「思考」とは異なります。

 

 

続いて野球に関する「知識」が無い留学生Bさんの番です。

 

Bさんは年齢構成比を聞いた後、

・日本は若者と高齢者とどちらが裕福ですか?

・余暇に使える時間は年代により異なりますか?

と質問を投げかけ、回答をえて考えてからプレゼンに臨みました

 

Bさんのプレゼン

プロ野球の未来は明るい

高齢者は資金的に余裕があり、他に娯楽も多くない。

時間もたっぷりある。

シニア向けのビジネスを展開すべき

いかがでしょうか。

Bさんの話もそれなりに論理的であると思います。

アメリカでは実際にシニア向けに往年の名選手の特集などを活用して利益を上げているそうです。

 

 

Aさんはもともと日本にいて野球の現状を知っていたので、

グラフを見てとくに深く考えずに、

「野球の未来は暗い!」と結論づけたので

Bさんの高齢者向けのビジネスの思考には至りませんでした。

 

とはいえ、Aさんは悲観的である理由だけを述べ、

Bさんも楽観的である理由だけを述べています。

 

世の中の事象には良い面悪い面があり、

結論的には各人が思うところを選ぶわけですが、

 

情報を見て考えるときは良い面と悪い面の両方を考慮するのが

知識に騙されていない純粋な思考」になります。

 

「思考」は「知識」に騙される

先ほどのAさんは

日本のプロ野球界は保守的な人が牛耳っている

テレビ放映も激減してしまった

良い選手は大リーグに行く

などの様々な知識を自分のアタマの中から無意識に引っ張り、

プロ野球の年齢構成のデータを見た瞬間、自分の知識に合うように解釈し、

やっぱり日本のプロ野球の未来は暗い!

と断じてしまっています。

Aさんの知識自体は正しいものでも、せっかく新しい情報を見たときにすでに頭の中にある知識を引っ張り出して来たら新しい思考は生まれません

 

既存の知識は横に置いておき、新しく得た情報から新たに考えて初めて今まで見えなかった結論にたどり着けるのです。

 

中小企業診断士試験では、様々な事柄のメリットとデメリットを多面的に学びますが、

学んだ知識をそのまま出すのではなく、
診断先企業や与件文の情報から新たに考えることが大事ですよね。

 

理論など既存の知識は置いておき、対面している問題にしっかりと向き合うことの重要性を説いているものと思われます。

 

「知識は過去」「思考は未来」

知識と思考は似ているようで違った概念になります。

 

知識」とは過去の事実の積み重ね

思考」とは未来に通用する論理の到達点

 

詳しくなればなるほど、
その分野での新しいアイディアに否定的になる傾向が見られたら、

知識が思考を邪魔していることを疑うべきです。

 

とくに成功体験という知識は新しい知識を吸収する妨げになり、
先入観を持たずに考えることが難しくなります。

 

資格試験における解法や回答の型なども、
成功体験の知識として持っておくのは良いですが
固執せずに、設問文の変化球にも耐えられるようにしておきたいですね。

 

2.考えるべきは決めるプロセス

新しいことを実行するときには情報でなく「意思決定のプロセス」が重要です。

ゴールが明確になっていないと何のために調べたか分からなくなります。

 

例えば、

ビジネスにおいては、企業や業界の環境分析を詳細に調べあげるだけ、
資格試験においては過去の科目ごとの合格率や出題傾向を調べるだけ。

調べることで知識はついたかもしれませんが、活用しないと意味がありません。

 

「考えること」、「思考」とはインプットをアウトプットに変換すること。

 

情報を集めることは考えているように見えますが、

じゃあ、結論(=あなたの意見)はなに?」と聞かれたときに

何も浮かんでこないのであればそれは実は考えていないことと同じです。

 

資格試験で例えると、

「経営法務の難易度は受験年度によりバラツキが大きい」

というのはあくまでインプットされた情報で
それに対して「じゃあどうする」のアウトプットを考えないといけません。ということですね。

 

3.「なぜ」「だから何なの?」

手に入れた情報をもとに何が言えるかを考えることが重要です。

 

情報を見たときにまず考えるべきことは、

なぜ」と「だからなんなの」のふたつです。

 

なぜ       →数字の背景を探る
だから何なの?  →過去の結果がこの数字だと未来に何が起きるか、自分は何をすべきなのか

 

ビジネス本ではよく「なぜ」を3回繰り返すという話はありますが、

それに加えて「だから何なの?」を考えるようにすると自分の行動に落とし込める思考が出来そうですね。

 

 

 

4.あらゆる可能性を検討しよう

何かを考えるとき、無意識に選択肢の一部を排除してしまうことがあります。

考え漏れを出さないためにはどうすればよいのでしょうか。

 

筆者は分解図を推奨しています。

「生活保護費を減らすためには」という題材で考えると

  • 自活させる?
  • 不正受給を減らす?
  • 現物支給にする?
  • 生活保護制度を廃止する?

などすぐにいくつかの解決策が思い浮かぶと思いますが、

これでは考え漏れが出る可能性もあります。

 

 

考え漏れを防ぐには分解が大事です。

①生活保護を減らす = ②受給者数を減らす or ③一人当たりの支給額を減らす

②受給者数を減らすには = ④新規に受給する人を減らす or ⑤現在受給している人を減らす

④新規に受給する人を減らすには = ⑥不正受給を減らす or ⑦不正以外の新規受給人数を減らす。

 

などと分解すると対応策の漏れが無くなります。

これは企業経営でいうと売上を客数×購入単価×来店頻度と分解して検討する考えと同じですね。

5.知識は思考の棚に整理しよう

「知識」と「思考」の理想的な関係は

知識を思考の棚に整理する」ことで個別の知識が意味を持ってつながり、

全体として異なる意味が見えてくることです。

 

具体的な例としては

著者はNYテロ事件の時のBBC、CNN、NHKの報道体制の違いに関心を持ち

  • BBC テロの背景など分析的な報道
  • CNN 現場のパニック状態を報道
  • NHK 自国民の安否を報道

という報道姿勢に着目しました。

 

これらの報道姿勢は

事件の現場との距離の違いによるものでしょうか。

または、報道機関の体制によるものでしょうか。

 

少なくともこの違いを意識することで、もしBBCの職員にあった場合に

「へー、BBCの職員とは凄いですね」で終わることなく、

この報道姿勢の違いに関して聞くことができ、

 

他の国の報道関係者にあった時にその体制を聞くことができます。

 

つまり、思考の棚を持っておくことで情報収集に対する感度を高めることが出来るのです。

 

さらに、

この情報が手には入れば何が分かるか、何が言えるようになるか

 

を想定しておくと、

 

その情報を手に入れる価値」も判定が出来るようになります。

 

企業経営理論で考えると、

SWOT分析や5フォース分析をし、

どの情報が不足しているかが分かれば、その情報に関しての感度を高めることが出来るようになるし、

その不足している情報が手に入った場合、何が分かるかまで考えることが出来れば、
その不足している情報に対してお金を払って入手すべきかどうか、
どれだけ労力をかけるべきか、などの判断がしやすくなります。

 

 

つまり、(私の解釈になりますが)、3C分析やSWOT分析などのフレームワークは
ちきりんさんの言う「思考の棚」の一つであり、

これまでの経験で得られる知識などをフレームワーク(≒思考の棚)に整理しておくことで、

不足している情報への感度を高めたり、
何かを聞いた時にすぐに自分の意見を言うことが出来るようになります。

 

「頭の回転が速い人」と思われる人は、多くの人はその場で考えているのではなく、

待っていた情報が実際に手に入った時に、自分の思考の棚にジグソーパズルのようにはめ込み、

「その情報が存在したなら、こういうことが言えるよね」

すでに考えてあった結論を思考の棚から取り出しているのです。

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

 

私はこの本を読んでみて

資格試験でビジネスを理論的に学ぶことの重要さを改めて感じました。

理論的に学ぶ手段としては手軽に学べるStudyingがおススメです。

資格ごとに合う合わないがあると思うので無料お試しを使って試してみてください。

 

まとめ

要点は紹介させていただきましたが、下記のまとめのように紹介しきれていない部分もあります。

読んで損はないと思う本なので是非読んでみてください。

 

 

考えるって結局どうするの

  1. いったん「知識」を分離すること!
  2. 「意思決定のプロセス」を決めること!
  3. 「なぜ?」「だからなんなの?」を問うこと!
  4. あらゆる可能性を探ること!
  5. 縦と横に並べて比較してみること!
  6. 判断基準の取捨選択をすること!
  7. レベルをごっちゃにしないこと!
  8. 自分独自の「フィルター」を見つけること
  9. データはとことん追いかけること!
  10. 視覚化で思考を深化させること
  11. 知識は「思考の棚」に整理すること!

 

 

 

 

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