ITIL (アイティル)
① 物語性を取り入れた説明: 「ITIL」
新入社員のユウコは、IT企業のサービス管理部門に配属されてから、ITサービスの管理と運用について日々学んでいました。ある日、課長の鈴木がユウコに「ITIL」について教える機会がありました。
ユウコ: 「課長、ITILって何ですか?最近よく聞くんですけど、具体的にどういう意味なんですか?」
鈴木課長: 「いい質問だね、ユウコ。ITILとはInformation Technology Infrastructure Libraryの略で、ITサービスの管理と運用に関するベストプラクティスをまとめたフレームワークのことだよ。」
ユウコ: 「ベストプラクティスって具体的にどんなものなんですか?」
鈴木課長: 「例えば、ITサービスを効率的に提供するためのプロセスや手法が含まれているんだ。これを図書館に例えてみようか。図書館では、本を効率的に管理し、利用者が快適に本を借りられるようにするためのルールや手順があるよね。」
ユウコ: 「図書館のルールって、どんな本をどこに置くかとか、貸し出し手続きをどうするかってことですか?」
鈴木課長: 「その通りだよ。ITILも同じように、ITサービスを提供するための具体的な手順や方法を定めているんだ。例えば、サービスの提供開始から終了までのライフサイクルを管理するプロセスがあるんだ。」
ユウコ: 「サービスのライフサイクルってどんなものですか?」
鈴木課長: 「ITILのライフサイクルは、サービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジション、サービスオペレーション、そして継続的サービス改善の5つのステージから成り立っているんだ。それぞれのステージで、具体的な手順や方法が定められているんだよ。」
ユウコ: 「それぞれのステージで何をするんですか?」
鈴木課長: 「それでは各ステージについて詳しく説明するよ。」
- ITサービス戦略管理:
ITサービスの戦略を策定し、ビジネス目標に合わせた計画を立てるプロセス。 - サービスポートフォリオ管理:
提供するITサービスのリストを管理し、サービスの価値と優先順位を決定するプロセス。 - 需要管理:
サービスの需要を予測し、リソースの最適な配分を行うプロセス。 - ITサービス財務管理:
ITサービスのコスト管理を行い、予算の設定と支出の管理を行うプロセス。 - 事業関係管理:
ビジネスとITの連携を管理し、ビジネスのニーズに応じた調整を行うプロセス。
- デザインコーディネーション:
サービスデザインプロセスを調整し、統合された設計を提供するプロセス。 - サービスカタログ管理:
提供するサービスの詳細をカタログにまとめ、利用者に提供するプロセス。 - サービスレベル管理:
サービスの品質を保証し、サービスレベルアグリーメント(SLA)を管理するプロセス。 - 可用性管理:
サービスの可用性を維持し、サービスの中断を最小限に抑えるプロセス。 - キャパシティ管理:
リソースのキャパシティを管理し、需要に応じたリソースの提供を確保するプロセス。 - ITサービス継続性管理:
サービスの継続性を保証し、障害時にサービスを迅速に復旧するプロセス。 - 情報セキュリティ管理:
情報のセキュリティを確保し、データの機密性、完全性、可用性を維持するプロセス。 - サプライヤ管理:
サプライヤとの関係を管理し、契約の履行を監督するプロセス。
- 移行の計画立案及びサポート:
新しいサービスや変更を導入するための計画を策定し、サポートを提供するプロセス。 - ナレッジ管理:
知識を管理し、組織全体で共有するプロセス。 - サービス資産管理と構成管理:
サービス資産と構成アイテムを管理し、正確な情報を維持するプロセス。 - リリース管理及び展開管理:
サービスのリリースと展開を計画し、実行するプロセス。 - サービスの妥当性管理及びテスト:
サービスの妥当性を確認し、テストを実施するプロセス。 - 変更管理:
サービスの変更を管理し、リスクを最小限に抑えるプロセス。
- サービスデスク:
利用者からの問い合わせや問題に対応する窓口。 - イベント管理:
サービスの運用中に発生するイベントを監視し、対応するプロセス。 - インシデント管理:
サービスの中断や障害を迅速に解決するプロセス。 - 要求実現:
利用者からのサービスリクエストに対応するプロセス。 - 問題管理:
インシデントの根本原因を特定し、再発を防止するプロセス。 - アクセス管理:
利用者のアクセス権を管理し、セキュリティを確保するプロセス。 - 技術管理:
ITインフラストラクチャの技術的な管理を行うプロセス。 - IT運用管理:
ITサービスの運用を管理し、安定したサービス提供を確保するプロセス。 - アプリケーション管理:
アプリケーションの運用と管理を行うプロセス。
サービスの品質を向上させるためのプロセス。定期的なレビューと改善計画の実施を通じて、サービスの継続的な改善を目指す。
鈴木課長:さらに詳しく知りたい場合は下記の書籍などを読むといいよ
ITILのプロセス一覧表
サイクル | プロセス |
---|---|
サービスストラテジ | ITサービス戦略管理, サービスポートフォリオ管理, 需要管理, ITサービス財務管理, 事業関係管理 |
サービスデザイン | デザインコーディネーション, サービスカタログ管理, サービスレベル管理, 可用性管理, キャパシティ管理, ITサービス継続性管理, 情報セキュリティ管理, サプライヤ管理 |
サービストランジション | 移行の計画立案及びサポート, ナレッジ管理, サービス資産管理と構成管理, リリース管理及び展開管理, サービスの妥当性管理及びテスト, 変更管理 |
サービスオペレーション | サービスデスク, イベント管理, インシデント管理, 要求実現, 問題管理, アクセス管理, 技術管理, IT運用管理, アプリケーション管理 |
継続的サービス改善 | サービスの品質向上を目指すプロセス |
② 実際の事例: 企業や自治体などでの「ITIL」の使用例
企業の事例:
ある大手IT企業では、サービスの提供と管理を効率化するためにITILを導入しました。この企業は、多くのクライアントに対して様々なITサービスを提供しており、その品質を高めることが重要でした。ITILを導入することで、サービスの提供プロセスが標準化され、問題が発生した際の対応も迅速に行えるようにな
ITILのサービスオペレーションプロセスを活用することで、インシデント管理や問題管理が改善されました。例えば、システム障害が発生した際には、サービスデスクが迅速に対応し、インシデント管理プロセスに従って問題を解決しました。また、問題管理プロセスを通じて、再発防止策が講じられ、同様の障害が発生するリスクが大幅に減少しました。さらに、継続的サービス改善プロセスを活用して、サービス提供の品質が常に向上し、クライアントの満足度が高まりました。
自治体の事例:
ある地方自治体では、住民サービスの向上を目指してITILを導入しました。この自治体では、住民からの問い合わせやサービスリクエストが多く、対応に時間がかかることが課題でした。ITILの導入により、問い合わせ対応のプロセスが標準化され、効率的に対応できるようになりました。例えば、ITILのサービスデザインを活用して、住民サービスのポータルサイトを改善し、問い合わせフォームやFAQを充実させることで、住民の利便性が向上しました。
さらに、ITILのサービストランジションプロセスを活用して、新しいサービスの導入や既存サービスの改善がスムーズに行われるようになりました。例えば、住民のニーズに応じた新しいオンライン申請システムが導入され、申請手続きが迅速かつ効率的に行えるようになりました。これにより、住民の満足度が向上し、自治体の業務効率も大幅に改善されました。
ITILの重要性:
これらの事例から分かるように、ITILは企業や自治体において、サービスの品質向上と運用効率の向上に大きく貢献しています。ITILのベストプラクティスを活用することで、サービス提供の標準化が進み、問題発生時の対応も迅速に行えるようになります。また、継続的サービス改善を通じて、常にサービスの質を向上させることができるため、利用者の満足度も高まります。
③ クイズや小テスト: 「ITIL」の理解を確認するためのクイズ
クイズ1 ITILの主な目的は何ですか?
A. ITサービスの品質と運用効率の向上
B. ソフトウェアの開発
C. データのバックアップ
クイズ2 ITILのライフサイクルに含まれないステージはどれですか?
A. サービスストラテジー
B. サービス開発
C. サービスオペレーション
クイズ3 ITILを導入することで得られる主な利点は何ですか?
A. サービス提供の標準化と迅速な問題対応
B. 新しいハードウェアの導入
C. データベースの最適化
回答
- A
- B
- A
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