【企業経営】100億企業は必ず越えている“30名の壁”|中小企業が最初に直面する成長ステージとは 1-1

企業経営理論

📘 現場で見る30名の壁 ― 社長の行列はなぜ起きるのか

 

◆【Scene】現場で初めて“30名の壁”を見る

雨が降る朝、ユキは緊張した面持ちでコンサル会社の玄関を出た。
中小企業診断士になって半年。
理論は覚えた、試験にも受かった──でも、現場に向かう自分にはまだ自信がない。

今日は、けん先生と一緒に社員数28名の製造業を訪問する日だ。
まさに「30名の壁」に差し掛かっている企業である。

ユキ
ユキ

前職が30名で混乱していた時、私は何もできなかった…。
今日の現場はどうだろう……

そんなユキの不安を察したように、けん先生は優しく語りかける。
あいにく傘を忘れたユキと距離は近く、歩調はぴったりだった。

けん先生
けん先生

30名の壁ってね、“スタートアップの卒業式”みたいなものなんだよ。

ユキは思わず歩みを止めた。


◆ 30名の壁とは何か

けん先生は歩きながら、以前ユキに説明した資料をスマホで見せてくれた。

けん先生
けん先生

前に話した組織のライフサイクルは覚えている?

けん先生:
起業者段階(〜50名)では、組織は次のような特徴を持つんだ」

・社長がほぼ全ての意思決定を握っている
・メンバーは“なんでも屋”として柔軟に動く
・人数が少なく価値観が自然に共有される
・仕組みや制度は未整備
・情報共有は「口頭・チャット・メール」が混在
けん先生
けん先生

一見するとスピードがあって良い組織だが、この“家族経営の限界点”が30名なんだよ。

ユキは前職の光景を思い出しながら頷いた。


◆30名の壁で起こり始める問題

人数が20名を超え、この企業のように30名に近づくと、次のような“症状”が表れる。

  • 業務が属人化し始める

  • 社長への相談・判断待ちが止まらない

  • 優秀な人に仕事が集中

  • 評価・給与の基準が曖昧で不満が噴出

  • 人材育成が行き当たりばったり

  • 判断が「社長の気分」で左右されやすくなる

けん先生
けん先生

スピードはあるけど、再現性がない組織になっていくんだ。


◆ スパン・オブ・コントロールから見る「管理の限界」

工場に向かう道すがら、ユキはふと気づいて口を開いた。

ユキ
ユキ

・・・あれ? さきほどの話って企業経営理論で学んだ
スパン・オブ・コントロール(統制範囲)
とも関係ありますか?

けん先生
けん先生

まさにその通り。
スパン・オブ・コントロールは、“1人の管理者が目を配れる人数”の限界を示す考え方だね。
一般的に 5〜7人が適正 とされている。

 

 

ユキ
ユキ

ということは……
社長1人で30人を見るなんて、そもそも不可能じゃないですか!?

けん先生
けん先生

実務では、ほとんどの社長が“無理をしているだけ”なんだよ。



◆ “社長の行列”はなぜ起きるのか

工場に到着した瞬間、ユキは空気の違和感を感じた。

新人は“どこに聞けばいいのか分からず”立ち止まり、
ベテランは眉間にシワを寄せて指示を飛ばし、
社員たちは次々と社長室の前を行き来する。

気づけば、社長室の前に小さな“行列”ができていた。

ユキ
ユキ

……これって、先生が言っていた“社長の行列”ですよね?

けん先生
けん先生

典型的な現象だよ。
意思決定が全部社長に集中すると、こうやって“詰まり”が起きる。

◆ なぜ学校は35人学級にしたのか

打ち合わせを終え、帰り道。雨は依然として降り続いていた。

けん先生:

けん先生
けん先生

最近、小学校のクラス人数が“40人→35人”に減る動きがあるのを知ってる?

ユキ
ユキ

はい。丁寧に見れる人数にするためって…。

 

 

けん先生
けん先生

そう。
あれは『同じ授業・同じ内容』を教える場ですら、
40人は多いと判断されたってことなんだ。

でも会社はどうだろう?

ユキは少し考え、そしてハッとする。

ユキ
ユキ

全員が違う仕事をしている…。
営業・製造・総務…
子どものクラスより“複雑性が高すぎる”……!

けん先生
けん先生

そう。
だからこそ 会社の30人は、学校の35〜40人よりはるかに難しい。
それでも“社長1人で全部見る”文化が中小企業には根強いんだよ。

ユキはペンを握り直した。

ユキ
ユキ

30名の壁って……“根性論の問題”じゃなくて、
認知科学や教育現場のデータとつながっている“構造的な限界”なんですね。

けん先生
けん先生

その通り。だから30名の壁は悪いものではなく、“構造的な限界”で自然に訪れる現象なんだ。

ユキの中で、今日の現場の光景と理論がようやくつながった。


◆問題の解決策(導入)

ユキはノートに走り書きした。

「30名の壁は“構造的な限界”。
  誰のせいでもなく、自然に起きる現象。」

ユキ

ユキ
ユキ

……じゃあ、どうすれば壁を越えられるんでしょうか?

けん先生
けん先生

答えは“構造を整理すること”だよ。
 次回は“問題・原因・課題”の3階建て構造で整理してみよう。

ユキは頷き、ノートを閉じた。


👉 次回:1-2|30名の壁を分解する ― 問題・原因・課題の3階建て構造

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