1. はじめに
近年、飲食業やIT業、不動産業などの異業種から宿泊業に参入する企業が増えています。インバウンド需要の拡大やワーケーションの普及など、市場の成長が期待される中で、異業種の強みを活かした宿泊ビジネスの可能性が広がっています。
しかし、宿泊業には独自の法律や運営ノウハウが必要であり、事前準備が欠かせません。本記事では、異業種から宿泊業へ参入するための成功のポイントと注意点を分かりやすく解説します。
2. 異業種から宿泊業に参入するメリットと課題
✅ メリット
- 既存のビジネスとのシナジー:飲食業ならレストラン付きホテル、IT業ならスマートホテルなど、異業種のノウハウを活かせる。
- 新しい視点でのサービス展開:従来の宿泊施設にはない独自の体験を提供し、差別化が可能。
- 市場の拡大チャンス:インバウンド需要や長期滞在ニーズの増加により、新規参入者にもチャンスがある。
⚠️ 課題・リスク
- 法規制の理解が必須:旅館業法、消防法、建築基準法などの規制をクリアする必要がある。
- 運営ノウハウの不足:人材採用、接客、設備管理などの知識や経験が必要。
- 許認可取得のハードル:営業許可の申請には時間と手間がかかる。
3. 異業種からの宿泊業参入成功のステップ
① 市場調査とビジネスモデルの検討
宿泊業に参入するにあたり、まず 市場調査 を行い、どのような形態で運営するかを決定することが重要です。

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宿泊形態の選定
宿泊施設には大きく分けて以下の4種類の形態があります。
- ホテル営業:ビジネスホテルや高級ホテルなど、一定の設備と個室を提供。
- 旅館営業:和風の宿泊施設で、温泉や食事の提供が特徴。
- 簡易宿所営業:ゲストハウスやカプセルホテルなど、相部屋や簡易な宿泊施設。
- 民泊:住宅を宿泊施設として活用し、Airbnbなどを利用した営業。
各形態にはそれぞれ法的な要件が異なるため、どの形態が最適かを見極める必要があります。
ターゲット設定
ターゲットの設定は事業の成功に直結します。宿泊施設を運営するにあたり、以下のようなターゲット層を検討します。
- ビジネス客:出張が多い会社員向け。アクセスの良い都市部に適したモデル。
- 観光客:国内外の旅行者。観光地に近い施設が有利。
- 長期滞在者:ワーケーション、留学生、単身赴任者など。
- 家族向け:ファミリー層をターゲットに、広い部屋やサービスを提供。
ターゲットに応じて、価格設定やサービス内容を決めることが大切です。

出店計画をしているエリアにどのような人たちが往来しているかを調べる、または強みをいかせるターゲットがどこに多いかを考えよう。
競合分析と差別化戦略
宿泊業は競争が激しいため、競合との差別化が不可欠です。
- 価格競争だけに頼らない:安さだけではなく、付加価値を提供。
- 独自のコンセプトを打ち出す:テーマ性のある宿泊施設や体験型の宿泊プランを提供。
- ロケーションの活用:都市型・観光地型・温泉地型など、立地による強みを活かす。
- 顧客体験を向上:高評価を得るため、快適な滞在環境や独自のサービスを提供。
競合分析をしっかり行い、自社の強みを明確にすることで、成功の可能性を高められます。

SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)を真剣に考えるのが超重要なんだ。
② 許認可の取得と法規制の確認
- 旅館業法に基づく営業許可の取得
- 保健所・消防署・自治体との連携
- 必要な書類と申請手続きの準備
③ 事業計画と資金調達
- 初期投資の試算(物件取得、設備、運営費)
- 資金調達の方法(融資、補助金、クラウドファンディング)
- 収益モデルの策定

補助金は必ず確認!中小企業診断士に相談してみよう。
④ 宿泊施設の準備とブランディング
- 立地選びと施設設計のポイント
- 独自のコンセプトを打ち出し、ブランド価値を高める
- ITを活用した効率的な運営(予約システム、無人チェックイン)

理念やビジョンはもちろん需要だけど、キャッチコピーも真剣に考えてみよう。高級旅館のコピーは参考になるよ。
⑤ 運営開始とマーケティング戦略
- 集客施策(OTA、SNS、インフルエンサー活用)
- 宿泊者満足度向上のための施策(リピーター獲得、口コミ対策)
- オペレーションの最適化(業務効率化、人材育成)
4. 異業種から宿泊業へ参入した成功事例
🏢 不動産業 × 宿泊業
- 東建ホームズ(東京都台東区):2018年から外国人旅行者向けの1日1組限定の貸切宿「宿家」事業を開始し、12ヶ月で22棟を受注・オープンしました。平均稼働率は90%近くに達しています。
- 株式会社宅都ホールディングス(大阪府大阪市):2017年3月より、賃貸マンションとして建築された不動産をコンドミニアム型ホテルとして運用を開始しました。大阪市内6か所で宿泊施設を開業し、インバウンド需要の増加に対応しています
- コスモスイニシア:外国人観光客向けアパートメントホテル「MIMARU」の立ち上げ。不動産会社が、プロシェアリング(外部のプロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決する新しい人材活用モデル)を活用してホテル事業に参入。アパートメントホテルという新しい形態を効率的に開発・展開しています。
🍽 飲食業 × 宿泊業
- ドンレミー:東京都足立区の老舗洋菓子店が宿泊業に参入し、ホテル・ココ・グラン北千住やホテル・ココ・グラン高崎などを運営しています。北千住のホテル1Fにある洋菓子店”ドンレミーアウトレット”では毎朝群馬県榛名工場からケーキが直送されてきます。お求めやすい価格で地元でも大好評です。
- (株)ひらまつ 高級フランス料理店「ひらまつ」やイタリア料理の「リストランテASO」の営業ノウハウをもとに、料理にこだわったオーベルジュタイプのラグジュアリーホテルを全国に展開しています。
♨️ 温浴業 × 宿泊業
- 万葉倶楽部:「都市の温泉郷」をコンセプトに、全国で温浴施設やホテルを展開。温浴施設の運営から宿泊業へと展開したリラクゼーションを主軸にした宿泊の融合成功事例の一つです。全国の主要都市や観光地に温泉施設を展開し、館内には露天風呂や岩盤浴、リラクゼーション設備を完備し、長時間滞在型の快適な環境を提供。観光客やビジネス客をターゲットに、高いリピート率を実現しています。
💒ブライダル業 × 宿泊業
- テイクアンドギブニーズ(T&G)は、婚礼事業から宿泊業へと進出した企業の代表例です。結婚式場の運営で培った高級感ある空間デザインやホスピタリティを活かし、ウェディングと宿泊を組み合わせた「ホテルウエディング」を展開。代表的なブランドとして「TRUNK(HOTEL)」があり、ブティックホテルとしても評価を受けています。宿泊と挙式・披露宴を一体化させることで、結婚式後の滞在需要を創出し、高付加価値な宿泊ビジネスへと成功裏に転換しました。
💄化粧品業×宿泊業
- エルセラーン化粧品 美と健康をテーマにした事業展開の一環として、宿泊業へ参入しました。運営する「ホテルエルセラーン大阪」は、化粧品販売と連携し、美容・健康に特化した宿泊体験を提供。エステやスパを併設し、化粧品を活用したスキンケア体験が可能。顧客には同社の会員が多く、宿泊を通じてブランドの世界観を体験できる場を提供しています。化粧品業界の強みを活かし、ホスピタリティと美容サービスを融合させた独自の宿泊ビジネスを展開しています。

この「世界観を表現」というのは効果的な手法で、ロレアルやシャネルなども直接経営には参入していないけど高級ホテルチェーンと提携しているよ。化粧品以外だとブルガリやアルマーニもブランドの世界観を表現するためホテルを運営しているんだ。
5. まとめ
- 異業種の強みを活かせば、宿泊業で成功する可能性は十分にある。
- 参入前に法規制、許認可、資金計画をしっかり確認することが重要。
- 競争優位性を持つビジネスモデルを確立し、戦略的に参入しよう。
インバウンド需要が広がっているため宿泊業は成長市場であり、新しい視点での参入が求められています。成功のカギは、事前準備と適切な戦略です!