【観光業】宿泊業の売上UPに必須!RevPAR・ADR・OCC・DORの完全ガイド

観光業

1. はじめに

宿泊業を始めるにあたって、感覚だけで経営をするのは非常に危険です。宿泊施設の経営は、日々の売上やコストが変動し、経済環境や観光需要の影響を受けやすいため、経営指標を正しく把握し、数値に基づいた意思決定を行うことが重要 です。

本記事では、宿泊業を成功させるために最低限知っておきたい基本的な経営指標について、中小企業診断士の視点から解説します。これから宿泊業を始める方や、すでに運営している方が事業の現状を把握し、より収益性の高い経営を実現するための参考になれば幸いです。

経営指標は、単なる数値ではなく、経営の健康診断のようなものです。これらの数値を適切に管理することで、宿泊業の持続的な成長と競争優位性を確立できます。


2. 宿泊業の基本指標

宿泊業の経営状況を把握するためには、以下の指標をチェックすることが重要です。

① 📊 RevPAR(Revenue Per Available Room):1室あたりの売上

計算式:RevPAR平均客室単価(ADR)×客室稼働率(OCC)

  • 宿泊業の最重要指標
  • RevPARが高いほど効率的な運営ができている
  • 施設全体の収益力を測る指標であり、稼働率と客室単価のバランス が重要
  • 高稼働率を維持しながら単価を上げることで、収益の最大化が可能に

RevPARを構成するADRとOCCトレードオフの関係にあるからバランスが大事なんだ。どちらかを上げるとどちらかが下がる性質があるよ。

📉RevPAR推移のグラフ

一般社団法人日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」より引用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

📌 OCCとADRの関係:

  • ADR(平均客室単価)を向上させようとすると需要が減少するためOCC(客室平均稼働率)が下がる
  • シーズナリティ(季節変動)を考慮し、価格と稼働率を調整することで、年間を通して安定した収益を確保することができます。

・よくある成功例・失敗例

✅ 成功例: Aホテルでは、閑散期に向けたプロモーションを強化しつつ、ADRの値下げを最小限に抑える戦略を採用。結果、前年同期比でRevPARが15%向上した。

❌ 失敗例: B旅館では、価格競争に巻き込まれADRを下げすぎた結果、RevPARが減少し利益率も低下。利益確保のために客室数を減らしたが、さらに客単価が下がり悪循環に…。

② 💰 ADR(Average Daily Rate):平均客室単価

計算式:ADR=客室売上÷販売客室数

・宿泊料金の適正価格を把握するための指標。
・「割引しすぎて利益が減っていないか」「競合と比較して適正な価格設定になっているか」を判断する材料になります。
・ハイシーズンとローシーズンでどの程度価格を変動させるべきかの判断基準にもなります。

ADRの推移 (全体)

201820192020202120222023
ADR39,478円34,188円43,641円38,267円51,568円59,675

参考サイト:一般社団法人日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」

 

ADRを維持しながら価格弾力性を考慮することが重要だよ。

値下げ競争にならないようブランド価値を高める工夫も必要だね。

需要に応じた価格変動(ダイナミックプライシング)も大事!

・よくある成功例・失敗例

✅ 成功例: CホテルはOTA(オンライン旅行代理店)の割引プランを最適化し、直販予約限定の特典を強化。その結果、ADRが10%向上し、利益率が改善した。

❌ 失敗例: Dリゾートでは、閑散期の集客のために大幅な値引きを実施。しかし、安さを求める顧客層が増え、ブランドイメージが低下。結果、繁忙期のADRも下がり、長期的な売上減少につながった。

③ 🏨 OCC(Occupancy Rate):客室稼働率

計算式:OCC=販売客室数÷総客室数

・客室がどれだけ稼働しているかを示す指標
・稼働率が低い場合は、プロモーション施策や価格戦略の見直しが必要
・高すぎる場合(90%以上)は、価格設定を見直してADRを上げる余地を検討
・低すぎると固定費負担が増し、利益率が低下する可能性

 

稼働率が高すぎるとサービスの品質低下につながり、顧客満足度が下がることにもつながるんだ。例えば混雑による順番待ちや清掃の遅れ、トラブル時の代替部屋が確保できないとか。

・よくある成功例・失敗例

✅ 成功例: Eホテルは、平日の稼働率向上を目指し、企業向けの連泊プランを導入。結果、OCCが80%を超え、売上が安定。

❌ 失敗例: F旅館は、予約数を最大化するために過剰な割引を実施し、OCCは95%を超えた。しかし、低価格の顧客層が増え、スタッフの負担も増大。結果、サービス品質が低下し、リピーターが減少。

・📉宿泊業態ごとの年度別客室稼働率(OCC)

宿泊業態2018201920202021202220232024
全体64.562.734.334.346.657.060.5
旅館40.239.625.022.833.136.736.8
リゾートホテル59.158.530.027.343.451.954.6
ビジネスホテル76.575.842.844.356.769.273.9
シティホテル80.379.534.133.650.168.872.4
簡易宿所35.233.415.516.621.225.129.0
  • 2019年以前(コロナ前)

    • シティホテルやビジネスホテルの稼働率は75~80%と高水準。
    • リゾートホテルは約60%、旅館や簡易宿所は40%前後で推移。
  • 2020~2021年(コロナ禍)

    • 全業態で稼働率が急落し、特にシティホテル・リゾートホテルの影響が大きかった。
    • 旅館や簡易宿所は20~25%まで低下し、大きな打撃を受けた。
  • 2022~2023年(回復期)

    • 観光需要の回復に伴い、ビジネスホテル・シティホテルのOCCが70%台に戻る。
    • リゾートホテルや旅館も回復傾向だが、コロナ前水準には未達。
  • 2024~2025年(正常化予測)

    • シティホテル・ビジネスホテルはコロナ前水準に回復。
    • 旅館や簡易宿所の回復は遅れ気味で、需要変化への対応が必要。
    • 観光需要に依存する業態では、マーケティング戦略の強化が重要。

最近ではWi-Fiの有無が満足度に大きく影響するので気を付けましょう!



 

④ 👫 DOR(Double Occupancy Rate):同伴係数 1室あたり平均宿泊人数

計算式:DOR=宿泊人数÷販売客室数 

ポイント:

  • DOR(1室あたりの宿泊人数)が多いほど、収益効率が向上。
  • 家族向けや団体旅行向けの宿泊プランを強化することで向上させることが可能。
  • 高DORは宿泊単価の引き上げにもつながる。

 

家族や団体旅行のターゲット設定や、追加ベッドの提供など、宿泊人数を増やす施策が有効だよ

・よくある成功例・失敗例

✅ 成功例: Gリゾートは、家族向け特典を追加し、追加ベッド無料キャンペーンを実施。結果、DORが20%増加し、売上が向上。

❌ 失敗例: Hホテルでは、単身客の需要を過大評価し、シングルルームを中心に運営。しかし、DORが低く収益性が悪化。結果、団体や家族向けプランを追加せざるを得なくなり、マーケティングコストが増大。


自分のホテルや競合するホテルがどのように見えるか、定期的にOTA(オンライントラベルエージェント)のサイトを確認しよう。
第三者に見てもらうことも効果的だよ。

3. 宿泊業の収益を伸ばすための価格設定のテクニック

宿泊施設の価格設定は、単なる「安さ」ではなく、適正価格で最大の利益を確保することが重要です。以下のテクニックを活用して、売上と利益を最適化しましょう。

1. ダイナミックプライシングの活用

需要に応じた価格調整を行う「ダイナミックプライシング」を導入することで、収益の最大化が可能になります。例えば、

  • 繁忙期は通常価格よりも10〜20%引き上げる。
  • 閑散期には長期滞在割引や追加サービスを付与して客単価を維持する。
  • 予約のタイミングによって料金を調整し、早期予約割引を設定する。

2. 競争分析に基づく価格戦略

競合施設の価格を分析し、自社の強みを活かした価格設定を行います。

  • 近隣ホテルの価格帯をチェックし、過度な値下げ競争に巻き込まれないよう注意。
  • 「価格×サービス価値」のバランスを考慮し、安売りではなくブランド価値を強化する。
  • OTA(オンライン旅行代理店)の価格調整を行い、自社予約の比率を増やす施策を打つ。

3. 追加サービスで客単価を上げる

価格を下げるのではなく、「付加価値」を提供することで、客単価を向上させます。

  • 朝食付きプランやディナープランの提供
  • スパやアクティビティとのセット販売
  • レイトチェックアウトやアップグレードオプションの設定

4. 予約チャネルごとの価格最適化

宿泊予約のチャネルによって異なる価格戦略を適用することも重要です。

  • OTAでは手数料が発生するため、自社予約の価格を調整して利益を確保。
  • 直販サイトで特典を提供し、自社予約比率を上げる。
  • 法人契約やリピーター向けの特別料金を設け、安定した収益を確保。

5. 長期滞在プランの活用

宿泊日数が長いほど、客単価は下がる傾向がありますが、安定した稼働率を確保するメリットがあります。

  • 3泊以上の連泊で割引を適用し、稼働率を安定させる。
  • ワーケーションやビジネス滞在向けの特典(デスク付き客室、無料Wi-Fi、高速インターネット)を用意する。
  • 月単位のサブスクリプション型プランを検討する。

価格戦略は、単に安くするのではなく、利益を最大化しながら顧客満足度を向上させることが鍵となります。

4. よくある質問(FAQ)

Q1: RevPARを上げる最も簡単な方法は?

A: シーズナリティを考慮したダイナミックプライシングを導入し、適正価格で販売すること。

Q2: 稼働率が高いのに利益が伸びないのはなぜ?

A: 価格設定が低すぎる可能性がある。ADRを見直し、付加価値を提供するプランを導入する。

Q3: OTAを活用しつつ直販比率を増やすには?

A: 自社予約特典を充実させ、リピーター向けの優遇制度を設けること。

Q4: DORを向上させる施策には何がある?

A: 家族向けの宿泊プランを強化し、追加ベッド無料キャンペーンなどの施策を実施する。


5.まとめ

  • 宿泊業では、感覚ではなく数値を基に経営判断をすることが成功のカギ
  • RevPAR・ADR・OCCを中心に、売上・コスト・集客のバランスを最適化する
  • 定期的に指標をチェックし、PDCAを回すことで持続的な成長を実現できる

宿泊業は競争が激しい業界ですが、適切な経営指標を活用することで、利益を最大化し、長期的な成功へとつなげることが可能です。試行錯誤を繰り返しましょう!

 



 

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