コロナにより社会が一変し、在宅勤務など多様な働き方が取り入れられました。
在宅勤務はメリットが大きい反面、デメリットとして多く挙げられているのがコミュニケーション課題です。
コミュニケーション課題が目立つようになり、解決策として検討されるようになるのが社員旅行や社内イベントです。健康経営の観点でもヘルスツーリズムという考えにより、社員旅行が再注目されてきております。
今回は社員旅行の効果や実施理由などを紹介させていただき、
実施を迷っている企業様の判断材料にしてもらえればと思います。
1.社員旅行の実施企業の割合
人事労務分野の情報機関である産労総合研究所の調査によると
なんらかのレク行事を行っている企業の割合は64.0%、
社員旅行の実施割合は27.8%になるそうです。
2.社員旅行の効果
社員旅行の効果にはどのようなものがあるのでしょうか。
少し深く考えていきたいと思います。
(1)コミュニケーションの活性化
1.日常業務の円滑化
組織の3要素として挙げられるのが目的意識、貢献意欲、そしてコミュニケーションです。
コミュニケーションが取れていない企業は一人で業務を抱えることが多くなり、相談が少ないため個人の能力を超す問題が出てきたときに作業がストップしがちです。
コミュニケーションを強化すると、意思疎通が円滑となり情報共有や連携がスムーズになります。
依頼しにくいという理由で仕事を抱えてしまい本来の「自分でしかできない仕事」が出来ない、というケースは避けなければいけません。
社員の交流など不要、個人がベストパフォーマンスを出せばよいと考える企業も多いかもしれませんが、コミュニケーションが活性化している企業のほうが個々の能力以上の成果が発揮できると考えられています。進捗を共有することでも作業量の平準化などにより業務効率化が実現可能です。
2.興味関心や得意不得意の把握
日常業務の円滑化につながることですが、コミュニケーションを強化して同僚の関心ごとや得手不得手を確認することは、”誰に相談すれば早いか”ということが分かることにつながります。組織として戦うには現有戦力の把握をしておかないと経営資源の無駄遣いになるため、能力を把握しておくに越したことはありません。
また、同じ興味関心を持つもの同士が会話をすることで新たな発想が生まれることもあります。
3.離職率
「相談相手や悩みを話すことが出来る同期がいなくてやめる」ということもよくある話です。
社員旅行によるコミュニケーションの強化は結果的に離職率の低下へとつながり、採用活動への多額な出費を抑えることにもつながります。相談してくれれば異動などで適材適所を検討することもできたり、同期であれば話すだけで不満が解消されることもあるでしょう。
(2)一体感の醸成
社員旅行の効果で期待されるものの2つ目は一体感の醸成です。一体感とはその場にいる人たちの気持ちや考えが一つにまとまることです。
1 共通体験
社員旅行に参加をしたということは共通のオフの話題が出来ることでもあります。大規模なイベントになると直接その場では会話をしていないことはよくありますが、「あの旅行の時は〇〇だったよね」などと語り合うことが出来ます。共通の体験をしていることは仲間意識の醸成にもつながります。後で語り合いやすいように単なる宴会ではなく、旅行がおススメです。
一緒に何かを作り上げるというタイプのチームビルディングも最近のトレンドです。
2.社長メッセージ
社員旅行は直接社長からメッセージを届ける貴重な機会なので活用しない手はありません。コロナ禍ではメッセージ動画を視聴させるなど理念浸透に工夫をする会社は多かったと思いますが、やはりリアルには勝てません。
社長から直接従業員に対してどのような目的で旅行を実施したか、感謝の言葉があるのならば直接語りかけるのが効果的です。全体に対して語りかけるのも効果的ですが、社長がそれぞれの席を回って話しかけに行くということも非常に効果的ですので取り入れてみて欲しいですね。
(3)ロイヤルティの醸成とモチベーションアップ
ロイヤルティの醸成、つまり会社への忠誠心や所属意識の向上です。
1.会社の規模感を示す機会
大企業の場合は都心の一等地の大型ビルで多くの社員が一緒に仕事をするというパターンも多いですが、全国に支店がある場合はオフィスも小さくて会社の凄さを実感しにくいケースもあります。数千人が集まるイベントを実施することで、改めて会社の規模を感じてもらうことが出来ます。「お父さんの会社ってすごいね」、と子供に言われるだけでもその会社にいてよかったと思ってもらえることも。さらに、その大人数の中で表彰をすることは努力に報いる姿勢を示すことにもなり効果的です。
2.会社の自慢をする機会
自分の会社もしくはパートナーの会社を自慢する機会はあまりないものです。しかしそんな自尊心を満たしやすいのが社員旅行です。「会社の旅行でドバイに家族で行ってきた」などは友人との会話で自然に話しやすいネタでありながらちゃっかり会社の良さを自慢することにもなり好まれます。
全員参加ではなく優秀社員のみが参加できるインセンティブ旅行で特に効果を発揮する考え方ですね。
(4)社員教育
1.異文化を学ばせる機会
「給料を多く与えても最近の若者は海外旅行をしない」、などと嘆く経営者も多いです。お金があっても貯蓄や自分の趣味の範囲でしか使わないケースが多いため、会社が非日常の経験を積ませる機会を設けてあげることは社員教育に大きくつながります。
特にデザインの能力が求められる部署や業界などが、感性を磨いてほしいという理由で旅行する機会は多いです。また、業界を問わずIoTやSDGsの進んだ国を見に行きたいという需要が拡大傾向にあります。
2.社員同士で語り合い多様な考え方を学ぶ機会
社員旅行の効果として他の人の考え方を学ぶという効果を忘れてはいけません。特に芸術関係に関してはそれぞれ感じ方が違うため、同じ経験をした社員同士でどのように感じたかを話し合わせて考え方の違いを学ぶことは、個人旅行では得られない経験となります。
化学反応を起こしそうなメンバーを同じ班にすると効果的です。
(5)健康増進 健康経営
社員旅行が再び注目されている理由の一つに健康経営の評価を高める企業側の思惑があります。
健康経営銘柄やホワイト500、ブライト500を目指す企業が増えてきておりますが、経済産業省の健康経営度調査でも下記のように社内イベントを奨励するような指標が含まれております。
Q51.運動習慣の定着に向けた具体的な支援(研修・情報提供を除く)として、どのような取り組みを行っていますか。(いくつでも)
5. スポーツイベントの開催・参加補助を行っている
6. 心身の健康増進を目的とした旅行(ヘルスツーリズム)を開催し、運動の習慣付けの指導を行っている
3. 社員旅行を実施している企業
意外に思われるかもしれませんが、IT業界でも多く実施されていました。理由としては客先常駐なども多くなかなか普段顔を合わさないために、コミュニケーション課題が多くなりがちだったという理由と、他社と人材引き抜き合戦があるため福利厚生をよりよくしようとしたり、会社の色を出そうとするなどの理由です。
会社の魅力を高める場合は自分ではいかないような高級宿泊先を会社側が用意し、自由時間を多くするタイプの旅行が多いです。