モジュール結合度
① 物語性を取り入れた説明
中学生のハルはロボット工作クラブで、複数の部品を組み合わせてロボットを作るプロジェクトに取り組んでいました。彼は、それぞれの部品がどのように連携して動くかに興味を持ち、クラブの先生にその仕組みについて質問しました。
先生はこの機会を使って「モジュール結合度」という概念を説明し始めました。「ハルくん、君の作っているロボットの各部品をモジュールと考えてみよう。これらの部品がどれだけ独立していて、どれだけ他の部品に影響を受けずに動くかが、”モジュール結合度“に相当するんだ。」
「たとえば、君のロボットの腕が動く時、他の部分には影響を与えずに独立して動ければ、その結合度は低いと言えるよ。しかし、腕が動くたびに足も同時に動くような設計だと、その結合度は高くなる。結合度が低いほうが、各部品の修正や更新がしやすくなるんだ。」
ハルは、この説明を聞きながら、自分のロボットのどの部分を改善すべきかを考え始めました。少し調べたところ、いくつかの結合の種類があることに気が付きました。
「じゃあ、モジュール結合度の種類についても教えて!」
先生はうなずきながら、ロボットの例を使って各結合度を説明しました。
「データ結合は、モジュール間で単一のデータ項目が共有されるときに見られる結合形態だよ。たとえば、ロボットが物体を検知したとき、その情報をただ一つのデータとして次のモジュールに渡すんだ。このモジュールはそのデータを使って何か具体的なアクションを起こすわけ。単純で直接的なデータのやりとりが特徴だね。
「スタンプ結合は、複数のデータが組み合わさったレコードや配列など、データ構造を共有する場合に見られる結合形態だよ。ロボットの例で言うと、センサーからの複数の情報(温度、圧力、湿度など)を一つのパッケージとして次のモジュールに送ることがこれにあたる。これにより、受け取ったモジュールはより複雑な処理を行うことが可能になるんだ。
ハルはこれらの説明を聞き、それぞれの結合が具体的にどう影響するのかをさらに詳しく知りたがっていました。先生はさらに詳しい説明を続けることにしました。
「制御結合は、一つのモジュールが別のモジュールの操作を指示または制御する関係を示しているんだ。ロボットで言えば、障害物を検出したとき、その情報を中央の制御システムに送るとしよう。この中央の制御システムが、障害物の種類に応じてロボットの手を使って障害物をどかすように指示する場合、これが制御結合だね。」
「次に、外部結合は、モジュールが外部のシステムやデバイスに依存することを指すよ。たとえば、ロボットの動作が外部の電源やコントロールパネルに依存している場合、それは外部結合と見なされる。この結合は、システムの一部が外部の要素に強く依存していることを意味するんだ。」
「そして、共通結合は、複数のモジュールが同じデータやリソース(例えば、電源やセンサーデータ)を共有している状態を指す。この結合の場合、一つのモジュールで問題が発生すると、共有している他のモジュールにも影響を及ぼす可能性がある。つまり、共通のリソースへの依存が高いほど、リスクも高くなるんだ。」
「最後に、内容結合があるよ。これは一つのモジュールが他のモジュールの内部実装に依存している状態を指す。たとえば、ロボットの腕の動きが特定のプログラムコードに依存しており、そのコードが変更された場合に腕の動きが影響を受ける場合、それは内容結合とされる。内容結合は最も避けたい結合で、各モジュールの独立性が低下し、変更が困難になるんだ。」
「ありがとうございます!何か覚え方はありますか?」急にいろいろ教わって覚えきれないハルは尋ねました。
「そうだね・・。結合度の低い順に、『デスター星、外部も共通無いよう』というのはどうだい?地球と異なる星をイメージするんだ。」
ハル「・・・」
ハルはこれらの結合度の説明を聞いて、自分のロボットプロジェクトにどのように適用できるかを真剣に考え始めました。
このようにモジュール結合度の理解は、ロボット工作だけでなく、ソフトウェア開発やシステム設計においても非常に重要です。各部分がどのように相互作用するかを理解し、効果的に管理することで、全体のシステム性能と信頼性を向上させることができます。
② 実際の事例
大手ソフトウェア開発企業では、製品の保守性と拡張性を高めるために、モジュール結合度を意識した設計を積極的に採用しています。例えば、ある開発チームは、顧客管理システムの更新を行う際、各機能を独立したモジュールとして再設計しました。これにより、顧客情報の更新が他のモジュールに影響を与えることなく、効率的に処理できるようになりました。
③ クイズや小テスト
クイズ1:モジュール結合度が最も低いのはどの設計ですか?
A. 各モジュールが独立して機能する
B. モジュール間でデータを頻繁に共有する
C. 一つのモジュールが他の多くのモジュールに依存する
クイズ2:モジュール結合度を低く保つことの利点は何ですか?
A. システムがより複雑になる
B. システムのパフォーマンスが向上する
C. システムの保守が容易になる
クイズ3:モジュール結合度は何を評価するのに役立ちますか?
A. プログラムの実行速度
B. プログラムの信頼性と拡張性
C. プログラムの販売価格
回答:
クイズ1: A. 各モジュールが独立して機能する
クイズ2: C. システムの保守が容易になる
クイズ3: B. プログラムの信頼性と拡張性
応用情報技術者試験 令和5年春 午前 問46
