【中学生でもわかるIT用語】エキスパンションとは 物語と実際の事例でわかりやすく解説

『ア行』の用語

エクスパンション

① ストーリーでわかる「エクスパンション(Expansion)」

──「成功が広がる」と会社もお客様も幸せになる──

サブスクリプション型ITサービスの会社に入社したミカは、
オンボーディング、アダプションに続いて、
今日は 成長の最終フェーズである「エクスパンション」 を学ぶことになった。

山田課長:「ミカ、実はね──。
Slackは“たった3人の利用”が“100人利用”に自然と広がる設計になってるんだ。

ミカ:「えっ?営業が頑張って追加人数を獲得するわけじゃないんですか?」

課長:「違う。
成功しているお客様は、自分から“もっと使いたい”と思うんだよ。
それがエクスパンションだ。」

ミカは思わず前のめりになった。

ミカ:「課長、エクスパンションって“追加契約”なんですよね?
営業っぽいイメージがあります。」

山田課長:「うん、確かに売上は増えるけど、
カスタマーサクセスにおけるエクスパンションは“売り込むもの”じゃない。
“すでに成功しているお客様が、もっと成功できる状態をつくること”なんだよ。」

ミカ:「もっと成功…?」


◆ エクスパンション=成功の“伸びしろ”を広げること

山田課長はミカに図を見せた。

ミカ:「成功を拡張…ってどういうことですか?」

課長:「例えば、
3人で使っていたツールが“部署50人で使いたい”となったらどうなる?」

ミカ:「仕事がもっと便利になって、成果も増えますよね。」

課長:「そう。“成功の範囲が広がる”ということだね。
その結果として、
売上が増える(シート追加・上位プラン・追加機能)
──これがエクスパンションだよ。」


◆ エクスパンションは3つの形で起きる

課長はホワイトボードに3つのキーワードを書いた。

種類内容
アップセル(Up-sell)上位プランへ移行ベーシック → プロへ
クロスセル(Cross-sell)別の製品を追加CRM → チャットツール
シート追加(Seat Expansion)利用人数の拡大3人 → 50人

ミカ:「あ、わかりやすい!
アップセルとクロスセルって混乱しがちなんですよね。」

課長:「簡単に言うと…」

  • アップセル=“もっと良いものにしたい”

  • クロスセル=“これもあると便利”

  • シート追加=“人数が増えるとさらに良い”

ミカ:「成功してる状態だから“もっと広げる”が自然に起きるんですね!」

ミカ:「でも、、3つめの“シート追加”って、普通の言葉なんですか?聞きなれない感じです。」

山田課長:「SaaSの世界では一般的だね。
“Seat(席)=ユーザー1人分の利用権”と考える会社が多いから、
利用人数が増える=Seatが増える という意味で使われるんだ。」

ミカ:「へぇ、知らなかった! でも確かにSlackとかZoomって、使ってる人が増えるほど便利になりますよね。」

課長:「その通り。シート追加(Seat Expansion) は、
Slack・Zoom・Salesforceなど世界的SaaSの“成長の柱”。
成功しているから“もっと使いたい”という自然な流れが生まれやすいんだ。」

ミカ:「エクスパンションの中でも中心的なんですね!」

課長:「うん。“使う人数が増える”ということは、
そのサービスが組織の仕事にしっかり溶け込んでいる証拠だからね。」


◆ リテンション(継続率)とエクスパンションは実は連動している

ミカ:「ところで課長、リテンション(継続率)ってアダプションの話でしたよね?」

課長:「実はね、
エクスパンションが起きている顧客ほど、リテンション率が高いんだ。

ミカ:「えっ!? なんでですか?」

課長:「理由は3つある。」


● 理由①:投資効果が高くなり、離れにくい

人数が増え、追加機能も利用し始めると、
“失うコスト(損失)”のほうが大きくなる(スイッチングコスト)


● 理由②:成功体験が増える

成功体験が多いほど、感情的な愛着(エンゲージメント)が高まる。


● 理由③:チーム全体のコミュニケーションが依存するようになる

SlackやZoomのように、
チーム全員が使うサービスは自然とリテンションが高まる。

ミカ:「なるほど…!
エクスパンションは“売上が増える”だけじゃなくて、
離脱が減る(リテンション向上)効果もあるんだ!」

課長:「その通り。
だから世界のSaaS企業は“新規獲得よりエクスパンションを重視”している。」


◆ 実データ:エクスパンションの改善は会社の運命を変える

課長の資料には衝撃的な数字が並んでいた。

  • 既存顧客のエクスパンション売上は、新規獲得の5倍効率的
     出典:Harvard Business Review

  • 継続率が5%上がると、利益は25%〜95%改善
     出典:HBR

  • エクスパンションが強い企業は、売上の70〜80%が“既存顧客から”生まれる
     出典:Gainsight Pulse Report

ミカ:「本当だ。新規営業ばかり頑張るより、
エクスパンション戦略のほうが会社が伸びやすいってことですね!」

課長:「そう。
“顧客の成功”が広がれば、自然と売上が拡大していく。」


◆ Slack・Zoom・Salesforceはなぜ“エクスパンション重視”なのか?

山田課長は、ミカにスマホの画面を見せながら話し始めた。

課長:「ミカ、Slackにはもう慣れた?活用できている?」

ミカ:「はい!入社してから使うようになりました。メッセージが早くて便利ですよね。」

課長:「そう。Slackは“3人で使い始めたら、気づいたら50人が使っている”ってよく言われるツールなんだ。」

ミカ:「あ!先ほどもおっしゃってましたね。でもなんでそんなに自然に広がるんですか?」

課長:「便利だからだよ。そして、便利だからこそ“もっと使いたい”という気持ちが自然に生まれる。
これが エクスパンション(成功の拡張) なんだ。」

ミカ:「売り込むんじゃなくて、使っているうちに“広げたくなる”んですね!」

課長:「その通り。
Slack以外にも、ZoomやSalesforceなど世界的なSaaSは、同じようにエクスパンションで成長してきたんだ。」

ミカ:「エクスパンションが成功すると、“顧客も企業も両方ハッピー”になるんですね!」

山田課長:「その通り。
エクスパンション=売り込み
ではなく
エクスパンション=成功の拡張

なんだよ。」

ミカは深く頷いた。
オンボーディング、アダプション、エクスパンション──
“顧客の成功”がどう積み重なるのかが、一本の線でつながった気がした。


【エクスパンションの定義】
エクスパンション(Expansion)とは、顧客がすでに得ている成功をさらに拡張するために、上位プラン(アップセル)、追加機能(クロスセル)、利用人数拡大(シート追加)を通じて価値を広げるプロセス。リテンションと密接に関係し、サブスクリプション型ビジネスの売上成長の中心施策である。

② 実例:企業におけるエクスパンション活用

● Slack

チーム利用が自然に拡大する「プロダクト主導のエクスパンション」の代表格。
小規模利用から始まり、他部署へ広がるケースが非常に多い。
アプリ連携が増えるほど解約率が減るため、“使うほど必要になる”構造が成功要因。


● Zoom

働き方改革とリモートワークの流れで利用が爆発。
最初は「無料プラン+1対1の通話」から始まり、
チーム会議、社内研修、ウェビナー、オンラインイベント
へと利用範囲が自然に拡大。


● Salesforce

1つの部署がCRMを導入し、成果が見えると周囲の部署にも波及しやすい。
さらにマーケティングやBIツールとの連携で、“企業全体”のデータ統合が進み、
大規模なエクスパンションが起きる傾向にある。


③ エクスパンション理解チェック(3択クイズ)

クイズ1

エクスパンションの本質は?
A. 売り込み
B. 追加費用の請求
C. 顧客の成功をさらに広げること


クイズ2

Slackがエクスパンションで成功している理由は?
A. 連携アプリが多く、使うほど価値が高まるため
B. 広告費が多い
C. 無料プランしかない


クイズ3

エクスパンションが売上に効く理由は?
A. 新規営業よりコストが低く効率的だから
B. 景気に左右されないから
C. 売上を固定化できるから


【答え】

クイズ1:C → “成功の拡張”がエクスパンションの本質。
クイズ2:A → 利用範囲が自然に広がる“構造”を持っている。
クイズ3:A → 新規獲得の5分の1のコストで実現できる。

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