バイオミミクリー
① ストーリーでわかる「バイオミミクリー(Biomimicry)」
放課後の理科室。ユウキは昆虫の標本を見ながら、先生に質問した。
ユウキ:「先生、このカワセミのくちばしって、すごく長くてスマートですね。どうしてこんな形なんですか?」
先生:「いいところに気づいたね、ユウキ。実はそのくちばしの形、新幹線のデザインにも使われているんだよ。」
ユウキ:「えっ!? 鳥のくちばしが新幹線に関係あるんですか?」
先生:「そう。“バイオミミクリー(Biomimicry)”という考え方だよ。これは、自然界のしくみや形をまねして、技術開発に生かすことなんだ。」
ユウキ:「なるほど! つまり自然をお手本にしてるんですね!」
先生:「そう。たとえば昔、新幹線がトンネルに入ると“ドーン!”という大きな音がしていた。原因は、列車が空気を押しのけるときに発生する圧縮波。でも、カワセミが水に飛び込むときのくちばしの形を参考にしたら、空気抵抗が減って静かになったんだ。」
ユウキ:「すごい!生き物の形って、ちゃんと意味があるんですね!」
先生:「その通り。自然は何億年もかけて“最適解”を見つけてきた存在だから、私たち人間がそれを学ぶのは理にかなってるんだ。」
✅ バイオミミクリーと似た用語の違い
| 用語 | 意味 | バイオミミクリーとの違い |
|---|---|---|
| バイオテクノロジー | 生物の仕組みを利用して新しい技術や製品を作る | 「まねる」よりも「利用する」方向に重点がある |
| バイオデザイン | 生物の形態や構造をデザインに取り入れる | バイオミミクリーの一部で、主に見た目や構造に着目 |
| AI(人工知能)による最適化 | データ分析で最適な形や動きを作る | 自然を模倣するのではなく、人工的な計算から導くアプローチ |
ユウキ:「他にも自然をまねした技術ってありますか?」
先生:「たとえば、ハスの葉の“撥水性(はっすいせい)”をまねた防水コーティング。
水が転がり落ちる“ロータス効果”を応用して、傘や建物の外壁にも使われているんだ。
それから、ヤモリの足の吸着構造をまねた“のりを使わないテープ”もある。」
ユウキ:「えっ、それってまるで自然が教えてくれる発明みたい!」
先生:「まさにその通り。バイオミミクリーは、環境にやさしく、持続可能な社会(SDGs)を作るヒントにもなっているんだ。」
バイオミミクリー(Biomimicry)とは、自然界の生物や生態系の構造・機能・プロセスを模倣し、それを科学技術・デザイン・工学に応用する考え方や手法。
生物の進化が導いた「最適なしくみ」から学ぶことで、人間社会の課題を環境負荷の少ない形で解決することを目指す。
② 実際の事例:企業・研究で進むバイオミミクリーの応用
1. JR西日本― 新幹線のカワセミデザイン
先ほどの例でも紹介した通り、500系新幹線ではカワセミのくちばしを模倣して騒音を減少。
空気抵抗を約30%低減し、エネルギー効率も向上させた。
2. 森永乳業― ハスの葉の撥水構造を応用した塗料
「ハス効果(ロータス効果)」を利用したヨーグルト製品採用されているアルミニウム製のフタ。トーヤルロータスという撥水性包装材をもちいることでヨーグルトが付着しない。(出典:森永乳業 商品情報)。
3. JAXA― フクロウの羽から静音設計を学ぶ
航空技術分野でも応用が進んでおり、フクロウの羽のギザギザ構造をまねて、風切り音を抑えるファンや飛行機の翼の開発が進む(出典:JAXA FQUROHプロジェクト)。
③ バイオミミクリーの理解をチェック!3択クイズ
クイズ1
バイオミミクリーの基本的な考え方として正しいものは?
A. 自然の生き物を直接使って製品を作る
B. 自然界の仕組みや形をまねて技術に応用する
C. AIで自然を再現する
クイズ2
バイオテクノロジーとバイオミミクリーの違いとして正しいものは?
A. バイオテクノロジーは生物を利用、バイオミミクリーは自然をまねる
B. バイオテクノロジーは自然の模倣、バイオミミクリーはデータ分析
C. 両方まったく同じ意味
クイズ3
バイオミミクリーの実例として適切なのはどれ?
A. フクロウの羽をまねた静音ファン
B. スマホのAIカメラ
C. クラウドサーバーの自動スケーリング
【答え】
クイズ1:B → 自然を“まねて”技術開発に生かすのがバイオミミクリー。
クイズ2:A → バイオテクノロジーは「利用」、バイオミミクリーは「模倣」。
クイズ3:A → フクロウの羽構造をまねた静音化は代表的な応用例。


