2層コミット
① ストーリー性を取り入れた説明: 2層コミットとは?
新入社員のケンジは、システム開発の現場で出てきた「2層コミット」という言葉に興味を持ち、部長に質問しました。
ケンジ:「部長、2層コミットってどういう意味なんですか? なんだか難しそうな響きですね。」
部長:「いい質問だね。2層コミットは、複数のデータベースに同時に正しく処理を確定(コミット)させるための手順のことだよ。たとえば、A銀行とB銀行で口座のやり取りがあるとき、一方だけが成功して、もう一方が失敗すると大変なことになるよね。」
ケンジ:「確かに、片方だけお金が動いたらトラブルになりますね…!」
部長:「そうだろう? だから2層コミットでは、まず“全員準備OKか確認”してから、“全員そろって実行!”という2段階で処理するんだ。これを『第1層(投票層)』と『第2層(決定層)』って言うんだよ。」
ケンジ:「つまり、ちゃんと“全員そろったらGO”って確認してからじゃないと始めないってことですね!」
部長:「その通り。しかも、途中で『やっぱり無理』となったら全体をロールバックして元に戻すんだ。だから、データの整合性がしっかり保たれる。トランザクションの原子性・一貫性を保証する手法だね。」
ケンジ:「なんだかチームワークですね。でも、2層があるってことは…3層コミットなんてものもあるんですか?」
部長:「実はその質問、鋭いね!理論上、3層以上のコミット方式も考えられるけど、現場ではほとんど使われないよ。理由は、フェーズが増えるほど通信や障害対応が複雑になるからなんだ。だから、2層コミットが実用上のバランスが取れた方法として広く採用されているんだよ。」
ケンジ:「なるほど、必要以上に複雑にしすぎても逆に問題が出るんですね。」
部長:「その通り。シンプルだけど確実な方法が求められる。それが2層コミットなんだ。」
2層コミットの定義
この方式は、以下の2段階(フェーズ)で構成されます。
説明 | |
---|---|
第1層(投票層) | 各データベースに対し「このトランザクションを実行してもよいか?」と確認 |
第2層(決定層) | 全てのシステムが「OK」と返答したら、実際の書き込みを一斉に行う |
もし、どこかのシステムが「NO(実行不可)」と返答した場合、すべてのシステムでロールバック(中止)を行い、トランザクション全体を取り消すことで、不整合を防ぐ仕組みになっています。
② 実際の事例:2層コミットの活用
2層コミットは、複数のシステムやデータベースをまたいだ一貫性のある処理(トランザクション)が求められる場面で使われています。以下は具体的な事例です。
事例1:銀行間の送金システム
A銀行からB銀行に送金する場合、送金元の口座からお金を引き落とし、送金先の口座に同額を加算する必要があります。2層コミットを使うことで、どちらか片方だけ処理されるという事故を防ぎ、両方の処理が「成功したときだけ」正式に反映されるようにできます。
事例2:オンラインショッピングと在庫管理
ユーザーが商品を購入するとき、注文情報と在庫データを別々のシステムで管理していることがあります。2層コミットを使えば、「注文処理」と「在庫減少」が両方とも成功したときだけ処理を確定できます。
事例3:自治体のデータ連携
行政サービスでは、住民基本台帳システムと税務システムなどが連携することがあります。2層コミットにより、1つの手続きが複数の部署で同時に正しく処理されるように保証されます。
③ クイズや小テスト
クイズ1:2層コミットの目的は何ですか?
A 一度に多くのデータを削除するため
B 複数のシステムで処理の整合性を保つため
C データベースを高速化するため
クイズ2:第1層とは何をする段階?
A すべてのシステムに「準備OKか?」を確認する段階
B データを暗号化する段階
C コミット後に通知を送る段階
クイズ3:3層コミットが実用で使われにくい理由は?
A セキュリティ上の問題があるから
B 通信が不安定になるから
C フェーズが増えると処理が複雑で効率が悪くなるから
④ 回答と解説
クイズ1の答え:B. 複数のシステムで処理の整合性を保つため
2層コミットはトランザクションの整合性を守るための手法です。
クイズ2の答え:A. すべてのシステムに「準備OKか?」を確認する段階
第1層では、すべての参加者にコミットできるか確認します。
クイズ3の答え:C. フェーズが増えると処理が複雑で効率が悪くなるから
3層以上になると、実用上はかえってトラブルが増えるため、あまり採用されません。
応用情報技術者試験 平成26年春 午前問29
