トークンパッシング方式
① 物語性を取り入れた説明
マコトとアヤは放課後に、校内のPC室で自分たちの新しいプロジェクトに取り組んでいました。
「このプロジェクト、どうすればみんながスムーズに作業できるかな?」マコトが考えました。
「それならトークンパッシング方式がいいかも!」アヤが提案しました。
「トークンって何?」
「考え方はシンプルだよ。データを送信する権利を持つトークンってものを作るんだ。このトークンがあるコンピュータだけがデータを送信できるようにする。」
「それってどういう利点があるの?」
「データの衝突が起きず、ネットワークが安定するよ。トークンは次々とコンピュータ間で回されるから、公平にチャンスが回ってくるんだ。」
「他にはどんなトークンパッシング方式があるの?」
「大きく分けてトークンバス方式とトークンリング方式があるよ。バス方式は一本の通信路(バス)に沿ってトークンが移動する。リング方式はコンピュータが輪のように繋がっていて、その輪の中でトークンが回る。」
② 実際の事例: 金融機関でのトークンパッシング方式
金融機関では、取引の信頼性と速度が非常に重要です。特にリアルタイムでの高頻度取引が行われる場合、ネットワーク上でデータの衝突が起きると大きな問題に繋がります。
ここでは、一つの大手銀行でどのようにトークンパッシング方式が採用され、その効果がどれほどあったのかを詳しく見ていきましょう。
この銀行では、元々はCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式が用いられていました。
しかし、取引の増加とともにデータの衝突が頻発し、取引速度が極端に低下していました。そのため、IT部門は新しいネットワークアーキテクチャの導入を検討しました。
選ばれたのはトークンバス方式です。この方式では、一本の通信路(バス)上でトークンを持つコンピュータだけがデータ送信の権利を持ちます。これにより、データの衝突が劇的に減少しました。
この銀行では、各支店やATM、オンラインバンキングシステムが中央データセンターに連結されています。トークンはこの中央データセンターから発行され、各ノード(支店やATM)に順に送られます。ノードがデータ送信を終えると、次のノードにトークンが渡されます。
このトークンバス方式の採用によって、以下のような利点がありました。
- データの衝突が大幅に減少:
トークンが制御することで、一度に一つのノードだけがデータを送信するようになりました。 - 公平性の確保:
各ノードが等しくデータ送信の機会を得るため、特定のノードによる通信の遅延がなくなりました。 - セキュリティの向上:
トークンがないとデータを送信できないため、不正アクセスが難しくなりました。
技術面では、トークンの生成・管理、バス上でのトークンのルーティング、エラー発生時のトークン再生成など、多くの新しいプロトコルとアルゴリズムが開発されました。
結果として、取引速度と信頼性が大幅に向上しました。
このように、トークンパッシング方式は金融機関で非常に効果的に活用されているのです。
③ クイズや小テスト
- トークンパッシング方式の最大の利点は何ですか?
A) 高い帯域幅
B) 衝突がほぼ発生しない
C) 低いレイテンシ - トークンバス方式とトークンリング方式の主な違いは何ですか?
A) トークンバス方式はバストポロジーを、トークンリング方式はリングトポロジーを使用する
B) トークンバス方式はCSMA/CDを組み合わせて使用するが、トークンリング方式はそうではない
C) トークンバス方式はトークンを持つノードがランダムに選ばれるが、トークンリング方式は常に最初のノードが選ばれる - トークンパッシング方式が一般的に推奨されない状況は何ですか?
A) 通信量が極端に少ない状況
B) 通信量が極端に多い状況
C) データの送信が頻繁に行われる状況