LCA(ライフサイクルアセスメント)
① ストーリー性を取り入れた説明:「LCA」とは?
放課後の科学部。中学2年生のユウキは、環境問題をテーマに自由研究をしていました。
ユウキ:「先生、最近ニュースで“LCA”って聞いたんですけど、なんですか?なんだか環境問題っぽい文脈で語られてましたが…。」
先生:「いい質問だね。ここでのLCAは“Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)”の略だよ。製品やサービスが資源を掘り出すところから廃棄されるまで、環境にどんな影響を与えるかを調べる方法なんだ。」
ユウキ:「へぇ…そんなに全部?例えばどんなことを?」
先生:「例えばスマホを考えてみよう。鉱山で金属を掘り出す時のエネルギー、工場で組み立てる時の電気、輸送での燃料、使っているときの充電に必要な電力、最後の廃棄やリサイクルまで。全部をつなげて“環境の成績表”をつけるんだ。」
ユウキ:「なるほど!“部分”じゃなくて“全部”を見るのがポイントなんですね。」
先生:「そうだね。ちなみに、LCAで評価されているスマホのメーカーはアップルやサムスンだよ。両社は環境報告書で“製造から廃棄までのCO₂排出量”を公開していて、より環境負荷の少ない製品設計を目指しているんだ。」
ユウキ:「へぇ!自分が使ってるスマホも、ちゃんと環境のことを考えて作られているんですね。」
先生:「その通り。そして今ではITの力も欠かせない。企業はクラウド上でデータを処理し、CO₂排出量をシミュレーションしている。AIを使えば“どの工程で改善すると一番効果的か”を予測することもできるんだ。」
よく間違えられる用語との違い
| 用語 | 意味 | 主な目的 | 違い |
|---|---|---|---|
| LCA(Life Cycle Assessment) | 製品・サービスのライフサイクル全体で環境負荷を評価 | 改善点の発見、CO₂削減計画 | 原材料から廃棄までトータル分析 |
| CO₂排出量算定 | CO₂排出量だけを計算 | 温暖化対策 | 評価対象が限定的 |
| EIA(環境影響評価) | 工場建設など特定プロジェクトの環境影響を事前評価 | 法規制対応 | プロジェクト単位の評価 |
「LCA」の定義
② 実際の事例
自動車業界ではLCAが注目されています。
電気自動車(EV)は「走行中はCO₂を出さない」とよく言われますが、バッテリー製造時には大量のエネルギーを消費します。トヨタや日産などはLCAを用いてEVとガソリン車の総合的な環境負荷を比較し、どの段階で改善が必要かを公表しています【環境省 LCA解説ページ】。
また、自治体の公共調達でもLCAの考え方が導入されています。例えば環境省が推進する「環境配慮契約法」では、自治体がコピー機や電気設備を購入する際に、価格だけでなくLCAデータを参考に“環境負荷の少ない製品”を選ぶよう求めています【環境省:環境配慮契約法】。
さらに、IT企業もLCAを活用しています。マイクロソフトはクラウドサービスの運営に伴うCO₂排出量をLCAで算定し、データセンターの冷却方式や再生可能エネルギー導入計画に反映しています【
これらの事例から、LCAは製造業・自治体・IT業界すべてに広がっている共通言語であることがわかります。
③ クイズや小テスト
クイズ1
LCA(Life Cycle Assessment)の主な目的はどれ?
A. 製品の売上を予測する
B. 製品やサービスの環境負荷をライフサイクル全体で評価する
C. 工場の建設コストを下げる
クイズ2
次のうち、LCAと混同されやすいが範囲が異なるものは?
A. CO₂排出量算定
B. LCA
C. EIA(環境影響評価)
クイズ3
LCAが重視するのはどの段階?
A. 製造段階のみ
B. 使用段階のみ
C. 原材料調達から廃棄までのすべて
回答と解説
クイズ1の答え:B
→ LCAは売上やコストではなく、環境負荷を総合的に評価する。クイズ2の答え:A
→ CO₂排出量算定は対象が狭く、LCAは包括的。クイズ3の答え:C
→ LCAは「原材料から廃棄まで」全体をカバーする。



