宿泊業を始めるにあたって、感覚だけで経営をするのは非常に危険です。宿泊施設の経営は、日々の売上やコストが変動し、経済環境や観光需要の影響を受けやすいため、経営指標を正しく把握し、数値に基づいた意思決定を行うことが重要 です。
本記事では、宿泊業を成功させるために最低限知っておきたい基本的な経営指標について、中小企業診断士の視点から解説します。これから宿泊業を始める方や、すでに運営している方が事業の現状を把握し、より収益性の高い経営を実現するための参考になれば幸いです。
経営指標は、単なる数値ではなく、経営の健康診断のようなものです。これらの数値を適切に管理することで、宿泊業の持続的な成長と競争優位性を確立できます。
宿泊業の経営状況を把握するためには、以下の指標をチェックすることが重要です。
計算式:RevPAR=平均客室単価(ADR)×客室稼働率(OCC)
RevPARを構成するADRとOCCはトレードオフの関係にあるからバランスが大事なんだ。どちらかを上げるとどちらかが下がる性質があるよ。
一般社団法人日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」より引用
✅ 成功例: Aホテルでは、閑散期に向けたプロモーションを強化しつつ、ADRの値下げを最小限に抑える戦略を採用。結果、前年同期比でRevPARが15%向上した。
❌ 失敗例: B旅館では、価格競争に巻き込まれADRを下げすぎた結果、RevPARが減少し利益率も低下。利益確保のために客室数を減らしたが、さらに客単価が下がり悪循環に…。
計算式:ADR=客室売上÷販売客室数
| 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
| ADR | 39,478円 | 34,188円 | 43,641円 | 38,267円 | 51,568円 | 59,675 |
参考サイト:一般社団法人日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」
ADRを維持しながら価格弾力性を考慮することが重要だよ。
値下げ競争にならないようブランド価値を高める工夫も必要だね。
需要に応じた価格変動(ダイナミックプライシング)も大事!
✅ 成功例: CホテルはOTA(オンライン旅行代理店)の割引プランを最適化し、直販予約限定の特典を強化。その結果、ADRが10%向上し、利益率が改善した。
❌ 失敗例: Dリゾートでは、閑散期の集客のために大幅な値引きを実施。しかし、安さを求める顧客層が増え、ブランドイメージが低下。結果、繁忙期のADRも下がり、長期的な売上減少につながった。
計算式:OCC=販売客室数÷総客室数
稼働率が高すぎるとサービスの品質低下につながり、顧客満足度が下がることにもつながるんだ。例えば混雑による順番待ちや清掃の遅れ、トラブル時の代替部屋が確保できないとか。
✅ 成功例: Eホテルは、平日の稼働率向上を目指し、企業向けの連泊プランを導入。結果、OCCが80%を超え、売上が安定。
❌ 失敗例: F旅館は、予約数を最大化するために過剰な割引を実施し、OCCは95%を超えた。しかし、低価格の顧客層が増え、スタッフの負担も増大。結果、サービス品質が低下し、リピーターが減少。
| 宿泊業態 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 64.5 | 62.7 | 34.3 | 34.3 | 46.6 | 57.0 | 60.5 |
| 旅館 | 40.2 | 39.6 | 25.0 | 22.8 | 33.1 | 36.7 | 36.8 |
| リゾートホテル | 59.1 | 58.5 | 30.0 | 27.3 | 43.4 | 51.9 | 54.6 |
| ビジネスホテル | 76.5 | 75.8 | 42.8 | 44.3 | 56.7 | 69.2 | 73.9 |
| シティホテル | 80.3 | 79.5 | 34.1 | 33.6 | 50.1 | 68.8 | 72.4 |
| 簡易宿所 | 35.2 | 33.4 | 15.5 | 16.6 | 21.2 | 25.1 | 29.0 |
2019年以前(コロナ前)
2020~2021年(コロナ禍)
2022~2023年(回復期)
2024~2025年(正常化予測)
最近ではWi-Fiの有無が満足度に大きく影響するので気を付けましょう!
計算式:DOR=宿泊人数÷販売客室数
ポイント:
家族や団体旅行のターゲット設定や、追加ベッドの提供など、宿泊人数を増やす施策が有効だよ
✅ 成功例: Gリゾートは、家族向け特典を追加し、追加ベッド無料キャンペーンを実施。結果、DORが20%増加し、売上が向上。
❌ 失敗例: Hホテルでは、単身客の需要を過大評価し、シングルルームを中心に運営。しかし、DORが低く収益性が悪化。結果、団体や家族向けプランを追加せざるを得なくなり、マーケティングコストが増大。
第三者に見てもらうことも効果的だよ。
宿泊施設の価格設定は、単なる「安さ」ではなく、適正価格で最大の利益を確保することが重要です。以下のテクニックを活用して、売上と利益を最適化しましょう。
需要に応じた価格調整を行う「ダイナミックプライシング」を導入することで、収益の最大化が可能になります。例えば、
競合施設の価格を分析し、自社の強みを活かした価格設定を行います。
価格を下げるのではなく、「付加価値」を提供することで、客単価を向上させます。
宿泊予約のチャネルによって異なる価格戦略を適用することも重要です。
宿泊日数が長いほど、客単価は下がる傾向がありますが、安定した稼働率を確保するメリットがあります。
価格戦略は、単に安くするのではなく、利益を最大化しながら顧客満足度を向上させることが鍵となります。
Q1: RevPARを上げる最も簡単な方法は?
A: シーズナリティを考慮したダイナミックプライシングを導入し、適正価格で販売すること。
Q2: 稼働率が高いのに利益が伸びないのはなぜ?
A: 価格設定が低すぎる可能性がある。ADRを見直し、付加価値を提供するプランを導入する。
Q3: OTAを活用しつつ直販比率を増やすには?
A: 自社予約特典を充実させ、リピーター向けの優遇制度を設けること。
Q4: DORを向上させる施策には何がある?
A: 家族向けの宿泊プランを強化し、追加ベッド無料キャンペーンなどの施策を実施する。
宿泊業は競争が激しい業界ですが、適切な経営指標を活用することで、利益を最大化し、長期的な成功へとつなげることが可能です。試行錯誤を繰り返しましょう!