書評:『ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか』を読んで考える ― ERPで変わる働き方

はじめに

みなさんの職場でも、こんなことありませんか?

  • 気づけば一日が「会議」と「メール」で終わっている

  • 「最新データってどこ?」と探すのに時間がかかる

  • 結局、残業して報告資料をまとめている

大企業の営業として働いていた時も、中小企業診断士としていろんな会社を訪問するときも感じますが、この悩みは大企業でも中小でも共通です。

そんなモヤモヤを見事に言語化してくれたのが、『ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか』という本。
この記事では本書をレビューしながら、どうすれば生産性を高められるのか、そしてERP(統合基幹業務システム)がどう役立つのかを考えていきます。

※ERPはEnterprise Resource Planning、直訳すると”企業資源計画”で日本語では統合基幹業務システムと略されます。


本書の基本情報と著者の主張

「日本のホワイトカラーは、国際的に見ても生産性が低い。理由は単に長時間労働だからではなく、仕事のやり方そのものが非効率にできているから」

本の冒頭からグラフやデータをもとに厳しい現実を突きつけてきます。

つまり、頑張っているのに成果が出ないのは、個人の努力不足ではなく仕組みの問題であるということ。

著者が挙げる要因はざっくりこの3つです。

  • 非定型業務が多い:状況判断が多く効率化が進みにくい

  • 成果を測りにくい:数値化できない業務が多い グレーゾーン業務ともいう

  • コミュニケーションコストが高い:会議・メール・調整が山盛り

読んでいて「これ、うちの会社のことじゃん…」と思う人も多いはず。


なぜ日本のホワイトカラーは非効率なのか?

昔からの「長時間労働は美徳」文化

高度成長期の成功体験がまだ残っていて、「とにかく長く働く=良いこと」という価値観が根強く残っています。

上司の承認待ちと前例主義

現場が動きたいと思っても、課長→部長→本部長→役員…と承認が必要。その間にチャンスを逃すのはよくある話です。ハンコのスタンプラリーとか言われたりしますね。

紙・Excel・メール依存

請求書は紙で回覧、在庫はExcelで管理、情報共有はメール。これでは探すだけで時間がかかります。

成果が見えない「無形業務の罠」

総務や人事などは成果が数値で見えにくいので、「どの仕事が価値を生んでいるのか」が不透明。時間をかけて分かりやすくする

会議と調整の洪水

ホワイトカラーの一日の大半は、意思決定を先送りにするための調整で費やされている。

まさに現場で日々見ている光景です。


本書のキーメッセージ

著者が伝えたいのはシンプル。

「個人の努力じゃなく、仕組みを変えないと生産性は上がらない」

  • 情報の断絶が最大のムダ

  • 曖昧な目標設定が「忙しいだけの仕事」を生む

  • 無駄な会議は「安心感のため」に行われている

つまり「もっと頑張れ!」では解決しないということです。


ERPで解決の糸口を探る

「ゼロの思想」で仕事を変える

本書で繰り返し出てくるキーワードが「ゼロを目指す」という考え方。

  • 手間ゼロ

  • 所要時間ゼロ

  • 差分コストゼロ

  • 間違いゼロ

これを現実に近づける仕組みこそ、ERP(Enterprise Resource Planning・企業資源計画)です。

ではERPとは何か?
一言でいえば、会社のバラバラな情報をひとつにまとめる仕組みです。

会計データ、在庫、受注、顧客情報などを、部署ごとにExcelや別システムで管理するのではなく、ひとつのシステムに集約して「一度入力すれば、全社で使える」状態をつくります。

つまりERPは、会社の頭脳や神経のような存在。情報の流れを一本化することで、手間・時間・ミスを限りなくゼロに近づけられるのです。


Excelのバケツリレーからの脱却

印象的だったフレーズが「Excelのバケツリレー」。

個人が作った数字をグループがまとめ、課がまとめ、部がまとめ…。最後に経営層に届くのは「古くなった数字」だったり、途中でミスが混じった数字だったりします。経営判断をするための数字なのに最新でなかったり正確ではない可能性のある数字を根拠にするなんて怖いですよね。

ERPなら一次情報を入れれば全社に自動反映。リアルタイムで最新の数字が見られるので、バケツリレーは不要になります。


ホワイトカラーの機械化=ソフトウェア化

製造業ならロボットですが、ホワイトカラーの場合はソフトが仕事を肩代わりします。

  • 紙の伝票 → ERPの自動仕訳

  • Excel管理 → ERPでリアルタイム反映

  • メール承認 → ERPワークフローで自動ルート化


グレーゾーン業務も扱える

営業の見込みや人事評価のように「数字だけじゃ測れない業務」もあります。
ERPなら数値データとコメントを一緒に残せるので、定量と定性をつなぐ器として機能します。


書籍の論点とERP(比較表)

本書の指摘した問題 ERPでの解決策 実際のイメージ
情報が縦割り 全社統合データベース 営業の受注情報が即、在庫・会計に反映
Excelのバケツリレー 一度入力すれば全社共有 数字合わせの会議が不要に
成果が曖昧 KPIをダッシュボード化 誰がどの案件を進めたかが一目瞭然
会議が多すぎる 進捗画面で状況確認 「数字が合わない」会議が減る
グレーゾーン業務 数値+コメントを記録 営業担当の感覚も組織で活かせる

まとめとご案内

『ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか』は、現場の「なんでこんなに効率悪いんだ?」をズバッと指摘してくれる本です。
ただし読むだけでは何も変わりません。仕組みを変えるための一歩が必要です。

ERPは「Excelのバケツリレー」から脱却し、「ゼロの思想」に近づくための強力な武器。
クラウド型なら中小企業でも手が届く選択肢があります。

けん

IT系の中小企業診断士 様々な資格試験に挑戦しながら仕事を楽しんでいます。 AIを駆使して息子の勉強用に中学生にもわかるようなIT用語説明の記事を始めました。 応用情報技術者/総合旅行業務取扱管理者/インターネット旅行情報士1級/ビジネス法務2級/ビジネス会計2級/販売士2級/ITパスポート/プロモーショナルマーケター/健康経営アドバイザー/G検定