放課後のパソコン部。ユイは学校の購買部に置かれているドリンクの売り上げデータを分析していた。
ユイ:「先生!このぶどうジュース、去年から毎週買ってる人がいて、全部で150本も買ってるんです!」
先生:「それはなかなかの“お得意様”だね。実はビジネスの世界では、その人が将来的にどれくらいお金を使ってくれるかを予測する考え方があるんだよ。LTV(ライフタイムバリュー)って言うんだ」
ユイ:「エル・ティー・ブイ…?なんかかっこいい響きですね!」
先生:「LTVは “Life Time Value” の略で、『顧客生涯価値』とも呼ばれるんだ。 あるお客さんが、取引を始めてから終わるまでの間に、どれだけのお金を使ってくれるかを予測する指標だよ」
先生はホワイトボードに簡単な式を書いた。
ユイ:「あっ、さっきのジュースの人なら…1本150円×週1×3年=21,600円!」
先生:「そう、それがそのお客さんのLTV。企業にとっては、広告やキャンペーンにいくらかけても赤字にならないかを判断するためにとても重要な数字なんだ」
ユイ:「なるほど!LTVが高い人には、ちょっと特別なサービスをしてもいいってことですね」
先生:「その通り。逆にLTVが低い場合は、コストのかけすぎに注意する必要がある。ARPU(1人あたりの平均売上)とは違って、“個々の顧客”に注目しているのがLTVなんだよ」
| 指標名 | 意味 | 観点 |
|---|---|---|
| LTV | Life Time Value(顧客生涯価値) | 1人の顧客がどれくらいの期間でどれくらいお金を使うか |
| ARPU | Average Revenue Per User(平均収益) | 顧客全体を平均して、1人あたりの売上を表す |
ユイ:「個別に注目するのがLTV、平均的に見るのがARPUかぁ。勉強になりました!でも今回は購買部の観点だったから在学期間中だったけど、たとえば私が一生使いたいと思っているシャンプーを作っている消費財メーカーは、どのようにLTVを計算しているのですか?女性の平均寿命とか使うんですか?」
先生:「いい質問だね。まさにその通り。たとえば、あるメーカーが『このシャンプーを20歳の女性が買い始めてから、平均寿命の85歳までずっと使ってくれる』と仮定する。1本1,000円で月1本のペースだとしたら…」
ユイ:「えーっと、1,000円 × 12ヶ月 × 65年だから…78万円!?」
先生:「そう、それがその人のLTV。もちろん、実際には途中で別の商品に変えるかもしれないし、使用頻度も変わるから、すべてが計算通りにはいかない。でも“平均値”として予測することで、広告費をどれくらいかけるか、どの年齢層にどんなキャンペーンを打つかの判断材料になるんだ」
ユイ:「なるほど、長く使ってもらえるかどうかって、商品そのものの品質や満足度にも関係してきますよね?」
先生:「まさにそのとおり。LTVは“数字”だけど、“お客様との関係の長さと深さ”を表すものでもあるんだよ。だから最近は『商品を売る』だけでなく、『ファンになってもらう』ことに力を入れる企業も増えているんだ」
ユイ:「LTVって、経済の話だけじゃなくて、人との信頼関係にも関わってるんですね。ちょっと感動しました!」
動画配信サービスのNetflixでは、LTVを使って広告費やオリジナル作品の制作費を判断しています。たとえば、ある顧客が月に1,500円のプランに加入しており、平均して3年間続けるとすれば、LTVは1,500円×12ヶ月×3年=54,000円になります。
この情報があれば、「このユーザーを獲得するために、5,000円の広告費をかけても黒字になる」と判断できます。また、LTVが高いユーザーにだけ向けた特別なコンテンツを用意したり、満足度を高めるサービスを提供したりする企業も多くあります。
LTVはどんな目的で使われる?
A 企業の収益全体を知るため
B 1人の顧客がもたらす価値を知るため
C 製品の機能を一覧にするため
LTVを計算する時に「購入頻度」が高いと何が起きる?
A LTVが下がる
B LTVに影響しない
C LTVが高くなる
次のうち、LTVとARPUの違いとして正しいのはどれ?
A どちらも同じ意味の用語である
B ARPUは1人ずつ、LTVは全体を見る指標
C LTVは1人の顧客に注目、ARPUは平均的に全体をみる
クイズ1:B(LTVは1人の顧客が将来的にどれだけお金を使うかを見る指標)
クイズ2:C(購入頻度が増えるとLTVは高くなる)
クイズ3:C(LTVは個人ベース、ARPUは平均ベースで異なる)