新入社員のユウコは、配属されたばかりのシステム運用チームで課長に質問していました。
ユウコ:「課長、この前の打合せで出てきたイミュータブルインフラストラクチャって何ですか?」
課長:「いい質問だな。簡単に言うと、『一度作ったサーバやシステムの環境は絶対に書き換えない』という考え方のことだ」
ユウコ:「え?でも普通はサーバにログインして設定を変えたり、ソフトをアップデートしたりしますよね?」
課長:「そうだな。でもそれだと『誰がいつ何を変更したか分からない』『設定ミスで不具合が起きる』という問題がよく出る。だからイミュータブル(不変)にしておくんだ」
ユウコ:「じゃあ変更が必要になったらどうするんですか?」
課長:「その場合は新しい環境を丸ごと作り直すんだ。料理で例えると、古いカレーを鍋に足し足しして改造するんじゃなくて、最初から新しく作るイメージだな」
ユウコ:「なるほど!毎回新しく作るから、『同じレシピなら同じ味』ってことですね」
課長:「そうだ。インフラをコード化(Infrastructure as Code: IaC)しておけば、自動的に同じ環境を再現できる。クラウドの自動化とも相性がいい」
ユウコ:「でもそれってコストがかかりませんか?」
課長:「一見そう思うが、クラウドだと新しい仮想マシンを数分で立ち上げられるし、古いものは削除できる。むしろ保守コストが下がり、セキュリティも強化できるんだ」
ユウコ:「つまり、イミュータブルにすると『いつでも同じ環境を再現できる』『余計な変更がなく安全』『トラブル時もすぐ復元できる』ってことですね」
課長:「その通り!ちなみに混同されやすいのはMutableインフラ(可変インフラ)だ。これは従来型で、サーバにログインして直接変更するやり方だな」
用語 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
Mutableインフラ | サーバに直接ログインして設定変更 | 柔軟に小さな修正が可能 | 人為的ミス・再現性が低い |
イミュータブルインフラ | サーバを変更せず新しく構築し直す | 再現性が高く安全、IaCと相性◎ | 設計初期に工夫が必要 |
実際に「イミュータブルインフラストラクチャ」は、政府のIT基盤でも採用が進められています。特に デジタル庁 が推進する「ガバメントクラウド」の運用方針の中で、この考え方が強調されています。
従来のシステムでは、サーバーに直接ログインして修正を行う「ペット型」の運用が主流でした。しかし、この方法では設定変更の記録が残りにくく、セキュリティ事故や障害発生時に原因特定が難しいという課題がありました。
そこでデジタル庁は、「サーバーを個別に直さず、常に新しいものに置き換える」というイミュータブルインフラの思想を導入。これにより、構成が常にコード(Infrastructure as Code, IaC)で一元管理され、もし問題が起きても安全に以前のバージョンへ「切り戻し」ができる仕組みを整えています。
この取り組みは、クラウド上の政府システムを「透明性・再現性・セキュリティの高い基盤」へ進化させるものであり、今後の自治体や企業システムにとっても大きな参考となります。
参考:デジタル庁「イミュータブルなインフラ運用」解説(digital-gov.note.jp)
イミュータブルインフラの特徴として正しいものはどれ?
A. サーバを直接編集して設定を変更する
B. サーバを変更せず、新しい環境を構築し直す
C. 運用担当者が自由にサーバをいじれる
イミュータブルインフラと相性がよい技術はどれ?
A. Infrastructure as Code (IaC)
B. 手作業によるサーバ運用
C. 人力によるログ管理
イミュータブルインフラのメリットでないものは?
A. 再現性が高い
B. セキュリティが強化される
C. 人為的な設定ミスが増える
クイズ1:B(変更せず新しく構築し直すのが特徴)
クイズ2:A(IaCと相性がよい)
クイズ3:C(設定ミスは減るのがメリット)