新入社員のミカは、サブスクリプション型サービスを運営するIT企業に配属された。
今日は課長と一緒に、ある顧客企業の利用状況データ(ヘルススコア)を確認している。
ミカ:「課長、最近“カスタマーサクセス”って本当によく聞きますよね。サポートと何がどう違うんですか?」
山田課長:「ミカさん。カスタマーサクセスを一言で言うなら、
『お客様がサービスで成功できるように、先回りして支援する仕事』 だよ。」
ミカ:「問題が起きてから対応する“サポート”とは違うんですよね?」
山田課長:「その通り。サポートは“起きた問題を解決する”のが役割。
でもカスタマーサクセスは、そもそも問題が起きないように準備し、成果まで伴走するんだ。」
◆ カスタマーサクセスの流れを先生が説明すると…
山田課長:「カスタマーサクセスは大きく3つの段階に分けられるんだ。」
山田課長:「まず最初は オンボーディング(Onboarding)。
お客様がサービスを使える状態に“乗せる”ステップだよ。」
ミカ:「なるほど、飛行機に“搭乗(ボーディング)”するイメージですね!」
山田課長:「そうそう。アカウント設定、初期レクチャー、キックオフミーティングなどを行って、
最初の成功体験(ファーストバリュー)を得てもらう のが目的なんだ。」
山田課長:「次に アダプション(Adoption)。
簡単に言うと、“サービスを使いこなしてもらう段階”だね。」
ミカ:「使えるようになったら、次は“習慣づけ”かぁ。」
山田課長:「その通り。使わなくなったらサブスクは解約されてしまうからね。
そこで、データ分析を使って“利用率の低下”や“つまずきポイント”を早期に発見し、
先にアクションして、価値を実感してもらう。」
ミカ:「“困ってから連絡を待つ”じゃなくて“困る前に寄り添う”んですね!」
山田課長:「お客様が成果を感じてくれれば、より便利な機能や上位プランを提案できる。
これが エクスパンション(拡張)。」
ミカ:「なるほど!成功体験があって初めて、自然にアップセルにつながるんですね。」
| 用語 | 意味 | カスタマーサクセスとの違い |
|---|---|---|
| カスタマーサポート | 不具合・トラブル対応 | サクセスは“成功の支援”が目的 |
| 営業(セールス) | 新規契約の獲得 | サクセスは既存顧客の成功と継続 |
| アカウントマネジメント | 契約維持・売上管理 | サクセスは成果と定着(アダプション)重視 |
| CX(顧客体験) | 顧客の全体的な体験向上 | サクセスは主に導入後の成果創出 |
ミカ:「この“ヘルススコア”ってなんですか?」
山田課長:「顧客の利用状態を数値化したもの。
ログイン頻度、機能の利用率、問い合わせ回数などをもとに
“離脱しそうか、順調か” を判断できる。」
ミカ:「課長、ここ“アダプション率30%のまま停滞”って書いてあります…」
山田課長:「そう。だから今週はアダプション向上のために、
“使ってない機能の活用提案”と“小さな成功体験の提供”を予定している。」
ミカ:「本当に、お客様と“二人三脚”なんですね。」
山田課長:「そう。お客様が成功することが、結果として会社の成長にもつながる。
だからカスタマーサクセスって、すごく意味のある仕事なんだ。」
ひと通り説明を聞いたミカは、ノートを閉じながら課長に尋ねた。
ミカ:「課長、カスタマーサクセスって奥が深いんですね…。
もっと勉強するにはどうしたらいいですか?
“体系的に学べる本”とかありますか?」
山田課長は笑顔でうなずき、デスクの引き出しから一冊の本を取り出した。
課長:「あるよ。
これはカスタマーサクセス界で“バイブル”とも呼ばれる本だ。」
ミカ:「青い表紙…?」
課長:「そう。業界では“青本”と言われている、
『カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』 だよ。」
ミカ:「これ、そんなに有名なんですか?」
課長:「著者のひとり ニック・メータ(Nick Mehta) は、
世界最大級のカスタマーサクセス企業 Gainsight(ゲインサイト)社のCEO なんだ。」
ミカ:「ゲインサイトって、カスタマーサクセスツールの会社ですよね?」
課長:「そう。ゲインサイトはまさに“カスタマーサクセスという考え方を世界に広めた会社”。
ヘルススコア管理、アダプション分析、アップセルのタイミング可視化…
いま当たり前に使われている手法の多くは、Gainsightが体系化したんだよ。」
ミカ:「すごい…!そのCEOが書いた本なんですね。」
課長:「実務で役立つ“10の原則”が網羅されている。
・オンボーディング
・アダプション
・離脱予兆の発見
・価値の設計
どれも“明日から使える内容”ばかりだよ。」
ミカ:「そういうの探してました…!ぜひ読んでみたいです。」
課長:「気に入ったら自分の勉強用に買っておくといい。
カスタマーサクセスに関わるなら、一冊は手元に置く価値がある本だよ。」
ミカは青本を抱えながら、目を輝かせた。
“顧客の成功をつくる仕事”に、ますます興味が湧いてきたようだ。
クラウドCRM大手。
“Customer Success Platform”を掲げ、顧客のKPI設定から成果創出までサポート。
アダプション状況を可視化する「Health Score」も特徴。
➡ 出典:https://www.salesforce.com/jp/
カスタマーサクセス部が“利用率低下の早期発見”を重視。
オンボーディング後、アダプションフェーズで専任担当が伴走支援。
➡ 出典:https://jp.corp-sansan.com/
カスタマーサクセスのリーディングカンパニーで、
CEOは青本の著者のひとり ニック・メータ。
導入企業のヘルススコア管理
利用状況の可視化
離脱予兆の検知
アダプション支援の自動化
顧客コミュニティによるフィードバック収集
といったカスタマーサクセスの「型」を世界に広めた。
アメリカのビジネススクール(スタンフォードなど)でも教材として扱われることが多く、
“カスタマーサクセスといえば Gainsight”といわれるほど。
(出典:Gainsight公式 https://www.gainsight.com/)
カスタマーサクセスのもっとも正しい目的は?
A. トラブル対応
B. 契約書の作成
C. 顧客の成功支援と価値の創出
オンボーディングの説明として正しいのは?
A. 使い続けてもらうための定着支援
B. 初期導入のサポートと「最初の成功体験」づくり
C. 契約更新の交渉
アダプションとは何を示す?
A. 顧客がサービスを使いこなし、価値を実感している状態
B. 新サービスの値付け
C. システムの不具合報告
クイズ1:C → 顧客の成功が目的。
クイズ2:B → 導入と初期成功がオンボーディング。
クイズ3:A → “使いこなし”と“価値の実感”がアダプション。