AIという言葉を初めて聞いたのはいつだったか覚えていますか?
私はドラゴンクエスト4のAI戦闘が最初だったと思います。
主人公以外の3人の行動の入力作業を簡略化したのは当時は画期的でワクワクしたことを覚えています。ザラキ(即死呪文)をAIが連発することがネタにされていましたが、まず1アクションで業務を完了する(敵を倒す)手段を試みて学習するのは合理的な行動なのかもしれませんね。
今回はAIがどのような歴史をたどってきたかを調べてみました。
黎明期 世界初の汎用コンピュータ(1946年-1956年)
エニアック(Electronic Numerical Integrator and Computer)は、1946年にアメリカ合衆国のペンシルベニア大学で開発された世界初の汎用電子式コンピュータです。第二次世界大戦中、弾道計算などのための軍事計算用の計算機が必要になり、それまでの機械式計算機では限界があったため、アメリカ陸軍が開発を依頼したものでした。
エニアックは、40台以上の大型のラックに収納され、17,468本もの真空管を使用していました。総重量はなんと30トンにもなりました。
エニアックに関しては下記のサイトで詳しく説明されています。
第1次ブーム期(1956年-1974年)
ダートマス会議
エニアックの誕生から10年、1956年に人工知能研究の草分け的存在であるダートマス会議が開催され、AIの研究分野が確立されました。「人工知能」という言葉もこの会議で初めて使われました。
ニューウェルとサイモンを中心に世界初の人工知能プログラムと言われるロジック・セオリストのデモンストレーションが行われ、有能な数学者のように数学の定理を自動的に証明できると示すことに成功しました。
当時は画期的なことだったはずですが、反応が薄かったらしいです。。
サイモンさんが「自分が非常に横柄だったからではないか」と推察しています。
ダートマス会議の参加者
のちに人工知能や情報理論の分野で多大な影響力を及ぼす著名な研究者たちが参加し、知的に行動するコンピュータープログラムの可能性について議論されました。
- マーヴィン・ミンスキー ニューラル ネットワークや AI の哲学的課題に貢献。
- ジョン・マッカーシー LISP 言語や人工知能の理論を開発。
- アレン・ニューウェル ジョン・マッカーシーと共にLISP言語や人工知能の理論を開発。
- ハーバート・サイモン 人間の意思決定をモデル化した。
- クロード・シャノン 情報理論の父で、数学的に情報量を定量化するアイデアを提唱。
推論・探索の時代
特定の問題に対する回答を示すことが出来るようになったことでブームになり、この期間にはコンピュータによる推論や探索の研究が進みました。
探索:与えられた状態から、目的の状態に至るまでの状態の変化を、場合分けを行いながら探し出すこと
背景として東西冷戦下ということもあり英語ーロシア語の機械翻訳などが特に注目されましたが、簡単な問題は解けても複雑な問題は解けない(トイプロブレム)ことが分かり、期待されたほどの成果も出なかったためブームは急速に冷めて1970年代には冬の時代を迎えます。
冬の時代(1974年-1980年代)
- 第1次ブーム期に比べて、AIの研究への資金提供が減り、研究者の興味も薄れた。
- しかし、この時期にも、機械学習の入門が発展し、知識ベースのシステムが開発された。
第2次ブーム期(1980年代-1990年代)
エキスパートシステム
ある分野の知識を大量に取りこみ、その分野のエキスパートのように振る舞うプログラムをエキスパートシステムと呼び、感染症の専門医のように振る舞うマイシン(MYCIN)や未知の有機化合物を特定するDENDRALをはじめ、多数のエキスパートシステムの開発が行われ、AIの研究が再び盛んになりました。
また、機械学習の分野でも人間の神経回路を模倣したニューラルネットワークや決定木などのガイドラインが開発され、AIの応用範囲が検討されていました。
ちなみに乗換案内ソフトの「駅すぱあと」は1988年に発売されたようです。膨大な専門情報(鉄道情報‣運行スケジュール)から最適なルートを提供する人口知能ですね。エキスパートつながりです。
AI戦闘が導入されたドラクエ4は1990年2月に発売されました。
第五世代コンピュータ
日本では、1982年から1992年にかけて第五世代コンピュータと名付けられた国家プロジェクトが推進されました。人工知能コンピュータの開発が目的で総額540億円の国家予算が投入されました。
プロジェクトは当初の目的である人工知能から自動推論へとシフトされていき、自動推論に必要な知識情報のデータベースも運用現場の宿題にされたままであり、研究成果としては国際影響力を持つ事は出来なかったとされています。
第1世代 真空管
第2世代 トランジスタ
第3世代 集積回路
第4世代 大規模集積回路
第3次ブーム期(2000年代-現在)
インターネットの普及やデータ量の増加により、AIの研究は大きく進歩しました。
2005年にレイ・カーツワイルが「シンギュラリティ」を提唱し、2045年に到来すると予測しました。
2006年に、オートエンコーダを使用したニューラルネットワークの深層化手法が提案された。いわゆるディープラーニングが発明された年です。
2010年代には、「ビッグデータ」の概念が提唱され、AI関連の研究が再び前進し始めました。
RNN,LSTM,GAN,などの人口ニューラルネットワーク派生型の研究が進みました。
2013年には、「東ロボくん」が東京大学入試の模擬試験(代々木ゼミナール)に挑戦しました。
東ロボくんは日本の国立情報学研究所が中心となって研究・開発が進められている人工知能の名称です。私大の8割で合格可能性が80%以上のA判定を獲得しましたが、学習に統計的手法を用いるAI理論の限界が明らかになり、新たなブレイクスルーが無い限り東大合格は不可能と判断されました。
2017年、マルチヘッド注意機構、位置エンコーディングを採用する「Transformer」と呼ばれる新しい自然言語処理技術がGoogleによって発案されました。RNNやLSTMよりも長い文章を一気に処理できるようになりました。TransformerはチャットGPTのベースになっています。
2020年には、OpenAIが基盤モデルとしてTransformerを採用した1750億パラメータを持つ自然言語処理プログラムGPT-3が開発され、アメリカの掲示板サイトRedditで1週間誰にも気付かれず人間と投稿・対話を続けました。
プログラムと気付かれた理由は文章の不自然さではなく、その投稿数が異常だったためでした。
2022年秋ChatGPTが公開されました。アクティブユーザー数1億人に到達するのにかかった時間はわずか2か月で史上最速(TikTokが9か月、Instagramが2年半)と言われています。
チャットGPTがリリースされてから、次々とAIに関するサービスが発表されております。
この機会にAIの歴史や仕組みを改めて学びなおし、どのようにAIと向き合うべきか、考えてみようと思いました。